レモン一つでレモネードとレモンパイとレモンケーキを作る!

FP(兼USCPA)がレモンをレモネードにする(逆境を転機に変える)ヒントを書き連ねます。 毎週月・木曜日に更新。

アメリカが5回目の利上げ。 ハイリスクのポイント運用は続けるべき、それとも止めるべき? 

PayPayのポイント運用に積極的な妻から、こんな質問を受けました。

 

アメリカの金利が上がっているらしいけど、このままポイント運用続けていいの?」

 

アメリカの金利

普段は経済ネタをほとんど口にしない妻から、まさかこんなワードが出るとは思いませんでした。

「虎の子」のポイント消滅危機の前では、もはや無視できなくなったようです。

 

果たして、このままポイント運用を続けるべきか、それとも止めるべきでしょうか?

 

 

ポイント運用とは

 

(既にご存知の方は、この項を飛ばしてください)

 

ポイント運用は、その名の通り、クレジットカードやQRコード決済などを使って買い物をするともらえるポイントをそのまま運用できる疑似運用体験サービスです。

 

あくまで「疑似体験」なので実際の株式や投資信託の投資とは違いますが、運用したポイントの残高は、株式や投資信託の値動きに応じて増えたり減ったりします。

 

さらに、以下のメリットもあり、手軽に運用を始めることができます。

  • 口座開設手続きが不要
  • ポイント運用で得た利益が非課税(注1)
  • 手軽に出し入れ自由

注1 2022年9月現在。 現行の法制度では、ポイントがあくまで商品・サービスに対する「値引き」として扱われるため。 しかし、将来的に制度が変わる可能性があります。

 

このサービスを始めたのはクレディセゾンです。

「永久不滅ポイント運用サービス」として、2016年12月に開始しました。

それ以来、Paypayを始め、携帯会社や証券会社、信販会社などが次々と参入しています。

 

ハイリスク・ハイリターンの「チャレンジコース」

Paypayのポイント運用は、2022年9月現在、次の4種類があります。

PPSCインベストメントHPより筆者が加工、作成

この4つのコースの中で、最もハイリスク・ハイリターンの運用が「チャレンジコース」です。

 

同コースの特徴は、参照する指標が「レバレッジETF」である事。

 

レバレッジETF」とは、通常の株式市場における値動きの2倍もしくは3倍で変動するもので、チャレンジコースが参照する「Direxion S&P500ブル3倍」は、米国を代表する企業500社で構成される「S&P500」の指標が1%動くとブル3倍では3%動きます。

 

こうしたリスクの高い商品のため、短期運用で大きく利益を狙う場合に使われるのが一般的です。 

 

「0になってもいいや」と始めた残高は、それでは済まないレベルに

 

ちなみに、妻は入ってきたポイントの全てを「チャレンジコース」で運用しています。

始めた当初はハイリスクであることは承知していましたが、

 

「おまけで入ってきたポイントだから、失って0になっても気にしない」

 

と、あまり深く考えていませんでした。

 

しかし今では残高が「まあいいや」では済まないレベルになってきました。

そこで、冒頭の質問となったわけです。

 

アメリカの「利上げ」によりチャレンジコースはマイナス40%

 

それでは、本題に入りましょう。

アメリカの「利上げ」は、「チャレンジコース」の値動きにどれだけ影響しているのでしょうか?

 

その前に、「チャレンジコース」の参照指標である「Direxion S&P500ブル3倍(SPXL)」の米ドルベースでの値動きを見てみましょう。  

 

下のグラフは、過去1年間の変動率を表しています。 1年前の2021年9月16日を1として、これまで何%動いたかが一目で分かります。

 

 

1年前と比較すると、指標は約40%も下落。

これでもやや戻した方で、2022年6月の下落率は50%にも達していました。

 

これでは誰もが心配になるレベルです。

一体なぜこんなに下がったのか。

その要因が、米国の「利上げ」です。

 

今年に入って米国は5回も利上げ

 

今年(2022年)に入ってから本記事執筆時点(9月22日)、アメリカの中央銀行は計5回も利上げを行っています。

その結果、わずか半年ほどの間で金利は3%も上昇しました。

これだけの短期間での上昇幅としては極めて異例です。

 

 

では、それぞれの利上げに対して、チャレンジコースの参照指標はどのように反応したのでしょうか。 

前述のグラフに当てはめると一目瞭然です。

 

 

1回目の利上げからは急激に下がり、その後上下はあるものの、全体としてはずっとマイナス。 急激かつ複数の利上げがいかに指標を下げたかがよく分かります。

 

利上げによるマイナスを打ち消す「円安ドル高」

 

米ドル建ての運用では、金利に加えて運用成績を左右するものがあります。

それが「為替」です。

通常、円高ドル安になれば値が下がり円安ドル高になれば値が上がります。

 

そして、これはチャレンジコースの元となる指標にも当てはまります。(注2)

 

(注2)Paypay運用を行う会社のHPにも、目立ちませんが記載があります。

Q 為替の影響を受けますか?

はい。お客様が選んだコースの参照資産の価格が変動しなくても為替が変動すると価格が変動します。 お客様が選んだコースの参照資産の価格が変動しなくても円高になると評価額が小さくなり、円安になると評価額が大きくなります。

Paypayインベストメント よくある質問(運用について)より。

 

より分かりやすくチャレンジコースの動きを知るために、「金利の動き」と「為替の動き」の関係を次のように整理してみます。

 

「利下げ」で「円」なら、プラス

「利下げ」で「円」なら、ニュートラ

「利上げ」で「円」なら、ニュートラ

「利上げ」で「円」なら、マイナス

 

表にすると、次のような関係になります。

 

 

為替の影響を加味すると、1年間の変動率はマイナス26%

 

さて、最近の現状はどうでしょうか?

 

金利は「利上げ」が続き、為替は円安ドル高。

上の表に従えば、指標への影響はニュートラルです。

 

具体的な影響は、グラフで見るとはっきりします。

下は、為替の変動を加味したグラフです。(注3)

 

注3 チャレンジコースの値動きに使う「円ベースの指標」は公表されていないため、便宜上、ドルベースの指標にドル円の為替レート(TTM、終値)を掛けたデータを元に、グラフを作成しています。

 


円安ドル高の影響を加味した「円ベース」では、対前年の変動率はマイナス26%となりました。 

 

「ドルベース」のマイナス40%よりは改善しましたが、利上げの影響が大きすぎて依然マイナスのままです。

 

ここからも、利上げがいかにチャレンジコースの指標を下げたかがよく分かります。

 

チャレンジコースは避けた方が無難。

 

さて、ここまで米国の利上げがPaypay運用のチャレンジコースに与える影響を見てきました。

 

ここまでの説明を読んで「やっぱりコースはやめておこう」と考える方は、賢明だと思います。 

 

その理由は、とにかく変動が大きすぎる。 その一言に尽きます。

利上げが5回もあったとは言え、1年で残高が26%も減少する運用はおすすめできません。  

 

なお、チャレンジコースに多額の残高を抱える妻には、「敢えて損切りする必要はないけど、ずっと先にもし値を戻したときは、別のコースに変えた方がいいよ。」と伝えています。

 

とは言え、年内には追加利上げ、そしてこの先来るであろう企業の業績悪化など、楽観はできない状況です。

 

いつ売れるようになるか、まではさすがに妻に断言できません。

 

(筆者について)

神奈川県横浜市で「人生の転機における財産やお金の問題」の解決支援を行うZ Financial & Associatesを運営しています。

インフレに負けず、夫婦で楽しく節約するには?【後編】

この記事は後編です。

前編はこちら。↓

 

smutexas.hatenablog.com

 

 

結果(電気代アップ)から、成果を「見える化」する。

 

前編では、前年比973円アップした我が家の電気代を2つの要因別に分解しました。

この分解が、夫婦の努力を「見える化」するのです。

 

① 単価が上がったことによる影響:     +2,720円

② 使用量が下がったことによる影響: ▲1,747円

合計                 +   973円

 

この結果から、以下のことが分かりました。

 

単価は急上昇したものの(+2,730円)、(節約により)電気の使用量が下がった(▲1,747円)お陰で、電気代の上昇は973円だけで済んだ。

 

つまり、1,747円分の節約が「見える化しています。

 

見える化した結果をほめたたえる。

 

さて、電気の使用量を下げたのは、誰のお陰でしょうか?

夫でしょうか。 それとも妻?

それなら、相手の努力をほめてあげましょう。

 

もし、夫婦で一緒に頑張った結果なら、お互いの成果をたたえて乾杯でもしませんか?

 

「いや、まだ不十分。 まだまだ節約の余地はある!」

と頑張り屋のあなた。

 

それなら、さらに節約できることはないか、夫婦で冷静に話し合いましょう。

しかし、くれぐれも相手に努力を押し付けないように!

 

電気代のアップをどうやって要因別に分解する?

 

それでは、前年比で973円アップした電気代を、どうやって「単価」と「数量」の要因別に分解すればいいのでしょうか?

 

分解までの具体的な流れを説明したのが、以下の図です。

 

電気代の上昇を、「対処できること」と「できないこと」に分解する

 

「何やら難しそう…」

いえ、心配は無用です。

難しい計算は必要ありません。

必要なのは、以下の2つだけです。

 

1.今月と前年同月の電気代請求書

2.電卓

 

ここからはサンプルとして我が家の請求書(東京ガスの「ずっとも電気1」(注1))を使いますが、是非、ご自身の請求書を使って計算してみてください。

 

注1 ずっとも電気1は、2021年5月16日をもって、新規申込受付を停止しています。

 

ステップ1: 今月と前年同月の電気料金合計を確認する。

請求書から、今月と前年同月の電気料金合計を比較しましょう。

 

当月   11,210円

前年同月   10,237円                   

差額          973円(のアップ)

 

 

ステップ2: 今月と前年同月の使用量を確認する。

同様に請求書から「使用量」を確認しましょう。

サンプルには3種類の「使用量」が載っています。

 

① 今月使用量 = 311kWh

② 前年同月使用量 = 375kWh

③ 前月使用量 = 202kWh

 

 

この内、比較するのは①今月使用量と、②前年同月使用量のみです。(注2)

 

そして、2つの数字を比べてみてください。

使用量が昨年より64kWh、つまり17%も減少しています。

節約が上手く行ったことが分かります。

 

(注2)実際は「今月使用量」と「前月使用量」の比較も可能ですが、使用量に季節的な要因を含むため、「節約度」を測るなら前年同月との比較が望ましいでしょう。

 

 

ステップ3: 単価を割り出す。

 

ステップ2の「電気料金合計」を、ステップ1の「使用量」で割れば、電気代の「単価」を算出できます。(注3)

 

当月  : 11,210円 ÷ 311kWh ≒ 36.05円/kWh

前年同月: 10,237円 ÷ 375kWh ≒ 27.30円/kWh

 

この時点で、単価は前年と比べて約24.3%も上がっていることが分かります。

これは猛烈なインフレです。

 

注3 厳密には「電気料金合計」の中に、使用量に比例しない料金(基本料金<契約アンペアと比例>とセット割引額<使用量に関係なく定額>)が含まれていますが、含めても結果への影響は少ないため、あえて除外せずに単価を割り出しています。

 

ステップ4: 前年との電気料金の差を、「単価差」と「数量差」に分ける。 

 

やっと分析のための材料が出そろいました。

最後のステップです。

ちょっとややこしくなりますが、あと少しです。

 

ステップ1で算出した電気料金の差額+973円を、「単価差」「数量差」に分けます。

ちなみに、

 

「単価差」とは、差額+973円のうち、単価の変動によって生じた差額

「数量差」とは、差額+973円のうち、使用量の変動によって生じた差額

 

のことです。

 

「単価差」、「数量差」は、以下の式で算出します。

 

(今月の単価 ー 前年同月の単価)× 今月の数量 = 単価差

(今月の数量 ー 前年同月の数量)× 前年同月の単価 = 数量差

 

式に当てはめて計算してみましょう。

 

(36.05円-27.30円 )× 311kWh  ≒ +2,720円(単価差)

(311kWh-375kWh)× 27.30円 ≒ ▲1,747円(数量差)

 

電気代が上がった要因を、①単価が上がったことによる影響と、②使用量が下がったことによる影響の2つに分けることができました。

 

なお、この分解を図にしたものが下の図です。

工業簿記や管理会計を習った方ならピンときたと思います。

そう、「差異分析」です。 

これを家計にも応用してみました。

 

レポートを作って夫婦でシェアしよう!

今回、前編、後編と分けて、「インフレに負けないための夫婦の節約術」というテーマで、結果を分解して、夫婦の成果を見える化する手法についてご説明しました。

 

ただし、毎回分解を手計算で行うのは面倒で、実用的ではありません。

そこで、家族で使用できる「水道光熱費レポート」を作成しました。

 

 

このレポートの更新方法と、サンプルデータ(Excelファイル)へのリンクは、近日中にこちらのブログでご紹介します。

 

追記: 前編の記事にて、後編にてレポートを作成します、と予告しましたが、予定を変更しています。

インフレに負けず、夫婦で楽しく節約するには?【前編】

 

夫と妻の「金銭感覚」。

それは時に夫婦のきずなを強めるときもあれば、壊すこともあります。

 

しかし、金銭感覚がピッタリと一致する夫婦はむしろレア。

ほとんどの夫婦は金銭意識の違いを認めつつ、時にケンカしたり、目をつぶったりして、バランスを取っているのが現状ではないでしょうか。

 

しかし、最近そのバランスを崩しかねない事態が起きています。

モノの価格の高騰。

つまりインフレです。

 

そこで今回は、インフレに負けず夫婦で協力して節約を実現するための方法を、前・後編に分けてご紹介します。

 

夫婦の金銭感覚バランスが揺らぐ①:Mさん夫婦のケース

(以下、個人が特定されないよう配慮しています。)

 

インフレ下で、なぜ夫婦の金銭感覚のバランスが崩れるのでしょうか?

最初の例を見てみましょう。 夫が浪費家で、妻が倹約家という対照的なMさん夫婦です。

 

以前からゲームPCやソフトに多額のお金を使う夫のMさんに対し、妻は自分の欲しい物を我慢するなどして、家計を何とかやりくりしてきました。

 

しかし、そこに訪れたインフレ。

出費もこれまで通りとはいかず、夫のMさんにも節約に協力してもらわなければなりません。

 

そこでPCゲームの時間を減らして電気代を減らすよう、勇気を出して妻は夫に協力を求めたところ、こう反論されました。

 

「そんなことしても焼石に水だろ! それよりお前のショッピングの無駄遣いを直してくれよ!」

 

無駄遣いどころか、これまで無駄な電気を使わないよう散々気を付けてきた妻は、一切の努力が否定されたように感じて大きく傷つきました。

 

夫婦の金銭感覚バランスが揺らぐ②:Iさん夫婦のケース

次のケースを見てみましょう。

 

Iさん夫婦は無駄遣いはあまりしないものの、夫は家計に関心がなく、妻(Iさん)に任せきり。

 

しかし最近、夫はテレビで電気やガス代が上がっていることを知り、珍しく「もっと光熱費を節約しよう。」と言い出しました。

 

その発言に妻のIさんは「カチン!」ときて、こう反論しました。

 

「もう十分頑張ってるわよ! あなたが気付いていないだけでしょ! それに、電気代をこれ以上節約して子どもが熱中症にかかったらどうするの!!」

 

「責任を押し付けるつもりではなかったのに…」

夫は普段の自分の無関心を悔いつつ、予想外の激しい反論に大いに傷つきました。

 

無用な誤解を避けるための「原因の分解」

起きた結果(電気代の高騰)の要因を分解する。

インフレ時に夫婦の家計を守るには、夫婦の協力が欠かせません。

 

では、不要な誤解を避け、価値観の違いを乗り越えて「節約」という共同作業に夫婦が向かうには、一体どうすればいいのでしょうか?

 

それには、起きた結果の要因を分解することが有効です。

何やら複雑そうですが、つまりこういうことです。

要因を、夫婦で「対処できること」と「対処できないこと」に分けるのです。

 

それが上手くできれば、「対処できないこと」に相手の責任を責めたり、無駄な時間を注いだりすることを避け、夫婦の時間とエネルギーを「対処できること」に集中することができます。

 

電気代が上がった原因を分解してみる: 我が家のケース

具体例として、我が家の電気代を「分解」してみます。 

 

我が家はあまり電気を使う方ではありませんが、それでもインフレの影響は避けられません。 8月の電気代は昨年8月と比べて約1,000円(約9%)上昇しました。

 

今年の8月: 11,210円

昨年の8月: 10,237円

差:     +  973円(アップ)

 

この数字をそのまま鵜呑みにすれば、

 

「昨年より電気代が上がっている! だから節約しなければならない!!」

という単純な結論に陥ってしまい、私たち夫婦の間で角が立ってしまいます。

 

そこで、昨年との差(973円)を以下の(A)、(B)に分解してみます。

 

(A)  電気代の「単価」が上がった(または下がった)影響。

(B)  電気の「使用量」が上がった(または下がった)影響。 

 

この(A)と(B)は、こう言い換えることができます。

 

(A) は夫婦では「対処できないこと」(=単価は電力会社が決める)

(B) は夫婦で「対処できること」(=使用量は夫婦でコントロールできる)

 

以下が、973円の差を実際に分解してみた結果です。

 

(A) +2,720円

(B) ▲1,747円

合計     +  973円 → 昨年との差973円と一致

 

この結果から、このような事実を読み取ることができます。

 

1.「電気代は、【単価】要因で大きく上昇(+2,720円)したため、本来はもっと高くなっていたはず。」

 

2.「しかし【数量】要因は大きく減少(▲1,747円)している。 

 

3. まとめると、【単価】は上がったが【数量】を減らしてカバーした結果、昨年比の電気代は973円のアップで済んだ。」

 

つまり、すでに節約を十分頑張っていて、その成果は出ていました。

ただ、それが電気代全体の中に隠れてしまったのです。

 

この結果を受けて、私たち夫婦は、節約を頑張った成果をお互いほめたたえました。

要因を分解したお陰で、不要な水掛け論を避けることができたのです。

 

次回予告

次回(9月19日アップ予定)の【後編】では、

・結果を要因毎に分解する方法

・レポート化して、もっと節約を夫婦で楽しむ方法

をご紹介します。

 

こんなレポートを作ります↓

我が家の水道光熱費レポート

(筆者について)

神奈川県横浜市で「人生の転機における財産やお金の問題」の解決支援を行うZ Financial & Associatesを運営しています。

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相続した別荘地をどうやって売るか。 梅宮アンナさんとSさんのケースから学ぶ秘訣。

写真は本文にある物件とは関係ありません。

相続した不動産をどうするか。

 

引き継ぐ本人にとってその物件に利用価値があればよいのです。

しかし、そうでない場合は問題です。

 

そんな相続を経験した、梅宮アンナさんとSさんの2人のケースから、その対処法を探ってみます。

 

 

梅宮アンナさんのケース

タレントの梅宮アンナさん。

お父様の梅宮辰夫さんが生前に建てた別荘の維持と売却で大変な苦労をされた、という記事が話題となっています。

 

神奈川県の最西部にある真鶴半島。

そこに建つ白壁の瀟洒な4階建ての別荘は700坪と敷地面積も広大です。

 

かつて「くいしん坊!万才」の6代目レポーターを務め、漬物チェーンを展開したほどの料理好きである梅宮辰夫さん。

45歳の時に建てた真鶴の海を一望できる別荘で、料理の腕を存分に振るったと言います。

 

しかし、本人にとって理想な家が、家族にとって最適とは限りません。

事実、真鶴はスーパーや病院も遠く、身近な友達もいません。

さらに、別荘の維持費は固定資産税だけでも年間400万円。

 

高齢のお母さま(クラウディアさん)の負担もあり、アンナさんは売却を決意します。

 

『負』動産を抱えたSさんのケース

<以下、特定の個人が推定されないよう配慮しています。

 

Sさん(60歳、男性)は、私が相続から不動産の売却サポートまで一貫して担当したお客様です。

 

今から4年前。

お母様が亡くなり、Sさんは軽井沢にある約200坪の土地を相続しました。

 

この別荘地、元々は約45年前に「夢の別荘地がお値打ち価格であなたのものに!」というキャッチコピーに惹かれて20年前に亡くなったお父様が購入したものでした。

 

しかし、いざ購入するとそれで満足してしまい、お父様はその土地に建物を建てることはなく、お母様が相続した後もずっと放置したまま。

 

Sさんはお母さまの生前から、その別荘地の存在は知っていました。

しかし、現地を訪れたことは一度もなく、別荘にまったく興味はありません。

 

そこで、現地の不動産屋にそれとなく、土地が売れるのかどうか聞いてみることに。

しかし、その返答はすげないものでした。

 

「周りの土地だって余ってるし、売るのは難しいと思いますよ。」

 

さらに頭を悩ませたのは、今後起こるであろう自身の相続でした。

 

Sさんはずっと独身。

もし自分に万が一のことがあれば、唯一生存している肉親の弟が全ての財産を引き継ぐことになります。

 

しかし、これも別荘地である八ヶ岳に住む弟は、会うたびにこう嘆くばかり。

 

「なあ兄貴、別荘地なんて買うもんじゃないよ。 土地を売りたくても売れない住人が周りにごろごろいるし、相続を断られる人だっている位だ!」

 

そんな弟に、45年も放置した別荘地を新たに押し付ける訳にも行かず、困り切っていました。

 

しかし、事態はあるきっかけで思わぬ方向へ動きます。

 

相続から4年が経ったある日。

見知らぬ不動産会社から1通の手紙が届きました。

そこには、こう書かれていました。

 

「貴殿がお持ちの土地に興味を示されている方がいらっしゃいます。 もし売却などをお考えでしたら、一度お話を聞かせて頂けないでしょうか。」

 

負動産を売却できた4つのきっかけ

梅宮アンナさんとSさん。

相続で引き継いだ不動産は、元々購入したお父様にとっての、理想の物件でした。 

 

しかし、相続した側にとってはそうではありません。

「故人の『富』動産が、遺された家族の『負』動産」になってしまったのです。

 

それでも、困難を乗り越え、最終的に二人は売却することができました。

 

その秘訣は何だったのでしょうか?

 

1.信頼できる不動産業者との出会い

梅宮アンナさんは当初、自力で買主を見つけようとします。

買主の条件は、「きちんと個人が自分たちのために使って、気持ちを休めに来る家として使ってくれる方」

 

しかし、自分1人で対応するには限界がありました。

「不動産屋さんが間に入らないと絶対ダメ!」

 

そこで、真鶴の土地と風習を熟知した、キャリア45年のベテラン不動産業者Tさんと出会います。 そこから、売却へ向けて大きく歯車が動き出します。

 

やはり、別荘地の売却にはこうしたプロフェッショナルのサポートが欠かせません。

 

2.不動産業者の入念な人選

一方のSさん。

手紙を送ってきた主は、軽井沢周辺を専門に扱っている不動産業者Mさんでした。

しかしキャリアは浅く、知名度もないことから信用していいものかSさんは迷いました。

 

そこで、私に「真に信頼できる業者探し」を依頼します。

 

私はMさんに加え、3つの大手不動産会社の担当者にそれぞれコンタクトし、見積もりを出してもらった上で、「どれだけ周辺の土地に知識と経験があるか」「販売力があるか」「親身になってもらえるのか」の3点を徹底比較しました。

 

その結果、当初のMさんが最もふさわしいと判断し、話を進めていくことになりました。

 

最初から信頼できる不動産業者を見つけるのは、伝手でもない限り難しいものです。

そこで、まずは複数の業者に当たりをつけて、見積もりなどを徹底比較することをお勧めします。

 

もし自信がなければ、業者の選定から不動産に詳しい専門家に任せる、というのも手です。

 

3.売却の条件をはっきりと伝えること。

梅宮アンナさんは、買い手の条件として前述の「きちんと個人が自分たちのために使って、気持ちを休めに来る家として使ってくれる方」以外にも、こんな条件を出しました。

 

 ・家の価値を分かってくれる人

 ・建築からの経過年数だけで判断しない人

 ・(ローン購入ではなく)キャッシュで買える人

 ・リビングからの景色を高く評価してくれること。

 

この結果、不動産業者Tさんが見つけたのは、偶然にもかつて東京で暮らしていた時にお母さまとお付き合いがあった、資産家のご夫婦だったそうです。 

 

梅宮さんはこのご夫婦に安心して別荘を売ることができました。

 

一見、条件が多いと売却が難しくなるように思えます。

しかしTさんにとっては、却って理想の買主を見つけやすくなり、梅宮さんと価値観を共有できる買主を見つけることにつながった、とも言えます。

 

4.今の状況だけで判断しないこと。

Sさんは、相続からしばらくの間、売却をすっかり諦めていました。

 

写真に写る物件の現場は、草木が無秩序に生い茂り、前面の未舗装道路は崩落寸前。

 

売れる訳はない。 

そう思っていました。

 

しかし、予想だにしなかった事態が起こり、状況が一変します。

コロナウィルスの蔓延です。

 

首都圏からのリモートワーク需要で軽井沢を始めとする別荘地が人気を集めます。

その結果、荒れ放題だったSさんの土地に興味を示す買い手が現れ、念願の売却につながりました。

 

このように、偶然、とも思えることが不動産売買には起こります。

今の状況だけで判断せず、諦めずにじっと待つことも大切です。

 

時を待ち、信頼できるパートナーを見つける。

長年売却もできず、お荷物となった不動産は、「負」動産とも、「腐」動産とも呼ばれます。 

 

しかし、梅宮アンナさんとSさんのケースのように、優秀なプロフェッショナルとの出会いや、予期せぬ社会環境の変化で、一転売却につながることもあります。

 

諦めず時を待ち、信頼できるパートナーを見つけること。

 

それが、負動産を売却する上でのとても大切なポイントです。

 

(筆者について)

神奈川県横浜市で「人生の転機における財産やお金の問題」の解決支援を行うZ Financial & Associatesを運営しています。

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人生を切り開く「選択力」。 磨くための4つの方法とは。

「人はたくさんの選択肢を与えられると、却って選ぶことができなくなる。」

 

このような説をよく聞きます。

私も同感です。

 

私たちは生きていく上で、多くの選択肢から最適なものを選ばなければならない場面に、何度も遭遇します。 

 

そのような場面でも動じることなく最良の選択ができれば最高です。

しかし実際は、その方法が分からず選択を先延ばしにしたり、選択をためらってしまうことがしばしばあります。

 

では、どうすれば選択を容易に、かつ適切に行うことができるのでしょうか?

 

【本記事は、現コロンビア大学ビジネススクール教授のDr. Sheena IyengarによるTED Talk "How To Make Choosing Easier"を元に構成しています。】

 

 

生きていく上で増える「選択上の制約」

 

よほどその対象に詳しいか、好きでない限り、膨大な量の中から選ぶという行為は難しく、時に苦痛を伴います。

 

さらにやっかいなのは、生きていく上でいろんな経験を重ねると、選択上の「制約」が増えてしまい、かえって選びにくくなる傾向があることです。

 

例えば、もし糖尿病と診断された場合です。

 

健康な時と違い、スーパーに陳列された膨大な食材から、成分や含有量などに十分配慮して選ばなければなりません。

糖尿病の場合、健康な時のように食事を選ぶことができません。

もう少し身近な例としては、失恋を重ねた後の、新たな恋人選びの場合です。

 

初めての恋愛のときは、「この人が好き!」という直感だけで恋人を選ぶことができました。

 

しかし、恋愛経験を重ねていくと、次第に相手の「外見」や「言葉遣い」、「性格」、「地位や収入」など、自分の中にある評価軸が定まり、かえって恋人選びが難しくなってしまうことは珍しくありません。

 

つまり、選択することは決してたやすいことではなく、選択の難易度は経験や環境などによって容易に変わってしまうものなのです。

 

選択のテクニック

 

しかし選択は、私たちがどんな環境や条件にあるかはお構いなしに、ある日突然、私たちに迫ってきます。

 

そこで、たとえ多くの制約が伴っても適切な選択ができるようにするために、次に紹介する「選択を簡単にするための4つのテクニック」が役に立ちます。

 

テクニック1: 切る(Cut)

その名の通り、選択肢を減らすことです。

その結果、選びやすくなる上、「選択しない」という選択を減らすことができます。

 

どういうことでしょうか?

 

例えば、架空の例で考えてみましょう。

 

勤務先が確定拠出年金を導入したKさんは、投資は全く未経験ながら、勤務先から投資対象として100種類()の投資信託の中から選べ、と言われました。 

 

 企業が実際の従業員に提供する運用商品数は35本までと決められていますが、テクニックを理解しやすくするため、敢えて100種類としています。

 

退職後に受け取る年金を増やすには、債券や株式など値動きのある商品を組み合わせた投資信託を選ぶことが大切です。

 

しかし、100の選択肢から選ぶことに圧倒されてしまい、Kさんは投資信託を選ぶことを止め、代わりに資産の成長がほとんど期待できない定期預金を選んでしまいました。

 

もし、選択肢の数が10であれば、Kさんの選択は違ったことでしょう。

 

この場合、会社の立場なら、Kさんに与える選択肢を減らす。

もしくはKさんの立場なら、自らの基準を作り、それに合わない選択肢を切る、という工夫が必要です。

 

テクニック2: 選択肢を具体化する(concrecation, make it real)

 

選択肢を選びやすくする方法の2つ目は、具体化です。

つまり、選択することで生じる結果を具体的に示すことで、選びやすくする方法です。

 

前述のKさんの例に当てはめてみます。

Kさんが投資信託を選びやすくするには、どちらの説明が有効でしょうか。

 

1.債券や株式を組み込んだ投資信託が選びましょう!

2.X投資信託が〇%のリターンを20年続けると、年金は年〇円になります。

より投資信託を購入した場合の効果をイメージできるの方が、Kさんにとっては選びやすいはずです。

 

テクニック3: カテゴリーに分ける(categorization)

これもその名の通り、選択肢をいくつかの「適切な」カテゴリーに分ける方法です。

 

投資未経験のKさんが与えられた100の投資信託は、例えば「価格変動リスク:低、中、高」、「保険あり、なし」、「債券型、株式型、ハイブリッド型」など、3,4つ程度の分かりやすいカテゴリー名がついていた方が、確実に選択しやすくなります。

 

しかし、カテゴリー名を付ける際は、商品の中身と一致している必要があります。

 

例えば、「株式」中心の投資信託に「ワイン」、「債券」中心の投資信託に「ブランデー」と名付けるのは無意味です。

(実際の投資信託にも、名称と中身が一致しないものがあるので要注意です。)

 

これでは何のことだか…

 

テクニック4: 徐々に複雑さに慣らす(condition for complexity)

このテクニックでは、選択肢を減らすのではなく、まず最初に少ない選択肢から始めて、慣れてきたらその都度、選択肢を増やしていく、という方法です。

 

Kさんは、最初に100種類の投資信託を選択肢として与えられても、選択できませんでした。

 

そこで、Kさんが最終的に「適切な」選択ができるよう、まず「株式型」、「債券型」の2種類の選択肢から始め、慣れてからは、そこからさらに「米国株」か「国内株」主体か、ESG関連か、など選択肢を細分化していくことで、よりKさんに合った投資を選ぶことができるようになります。

 

切り方が分からなければ、まずカテゴリー分けから。

 

ここまで、選択を容易にする4つのテクニックを紹介しました。

 

しかし、言うは易し、行うは難し。

 

特にテクニック1「切る」については、「多数ある選択肢の中から、どれを切ればいいのか分からない。」と戸惑う方も多いと思います。

 

その場合は、まずテクニック3「カテゴリーに分ける」から始めるのが、私のおすすめです。 

 

その理由は、選択肢をいくつかのカテゴリーに分ける過程で、「似たような選択肢」や「意味のない選択肢」を見つけることができるからです。 そうした選択肢を切ることで、徐々に選択肢を減らしていくことができます。

 

最適な選択には試行錯誤を伴います。

私も選択に迷い、悩み、立ち止まってしまうことはしょっちゅうあります。

よりよい選択ができるための智慧を一緒に身につけていきましょう。

 

筆者について:

(筆者について)

神奈川県横浜市で「人生の転機における財産やお金の問題」の解決支援を行うZ Financial & Associatesを運営しています。

公的年金クイズ! あなたはどれだけ知っていますか? 

まずは簡単な公的年金クイズに答えてみましょう。

 

老後にもらえるはずの公的年金

そこで、クイズです。

 

以下の質問の答えを知っていれば「はい」を。

知らなければ「いいえ」でお答えください。

 

ご自身の公的年金について、

 

Q1 「いくら受け取れるか」知っている?          はい  いいえ

 

Q2 「自分が何号の被保険者か」を知っている?       はい  いいえ

 

Q3 「公的年金を受けるために必要な加入期間」を知っている?

                                                                                                  はい  いいえ

 

Q4 「何歳になったら年金をもらえるか」を知っている? はい  いいえ

 

Q5 「加入している公的年金の種類」を知っている?   はい  いいえ

 

いかかでしょうか? 

ほとんど「いいえ」でしたか?

 

でも、それは恥ずかしいことではありません。

50歳未満の方であれば、これらの質問に「はい」と答えた方は少数派かと思います。

 

クイズの目的は、「金融リテラシー」の計測

種明かしをしますと、このクイズは、全国の18歳~79歳までの個人3万人を対象にした調査(※1)から公的年金に関する質問を引用したものです。 

 

この調査の目的は、いわゆる「金融リテラシー」の計測にあります。

 

「金融リテラシー」とは、金融や経済に関する知識や判断力のことで、この知識があることで、より自立して安心した生活が送れる、と言われています。

 

調査の結果と、ご自身の回答を比べてみよう

では実際の結果を見てみましょう。

以下のグラフは、Q1~5の各問に「はい」と答えた方の、年齢別および男女別割合を示したものです。 

 

是非、答え合わせのつもりで、ご自身と同じ性別と年齢層をチェックしてみてください。

 

知るぽると:2022年金融リテラシー調査結果より筆者作成(以下同様)

 

 

 

 

グラフから読み取れる3つの意外な点

回答が終わったところで、グラフの中身をもう少し詳しく見てみましょう。

よく見てみると、意外な事実が見て取れます。

 

1.「将来いくら受け取れる?」の正答率が最も低い

 

Q1~5は、ある順番に基づいて並べてあります。

 

この「ある順番」とは、50代以下の正答率が低い順です。

つまり、Q1が一番正答率の低い問題ということになります。

 

Q1の内容は何だったでしょうか?

「いくら受け取れるか知っている?」でした。

 

すなわち、Q5「加入している公的年金」よりも、Q4「何歳になったらもらえる」よりも、「いくら受け取れるか」を知らない方が多いのです。

 

この結果、意外です。

 

ほとんどの人が公的年金で一番気になるのは、私を含めて「自分が何号被保険者か」とか「必要加入期間がいくらか」よりも、「将来いくらもらえるのか?」だと思っていたからです。

 

なぜこのような結果になったのでしょうか?

主な理由は2つ考えられます。

 

一つは、将来の年金を当てにしていない、もしくは関心がない。

もう一つは、関心はあるけれど、どう調べればいいのか分からない。

 

どちらでしょうか?

私は後者と考えています。

その理由は、別の調査結果(※2)を見るとはっきりします。

 

この調査結果は「老後における生活資金源」として、何を重視するかを調べたものですが、「公的年金」と回答した方が71.1%と最も多く、2番目の「就業による収入」(49.1%)を大きく引き離しています。

 

※2 知るぽると 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]2021年より

この事実から、こんな結論を導くことができます。

 

「将来の老後生活のあては公的年金、と考えている方は多いものの、いくらもらえるかを具体的に知っている方は少ない。」

 

つまり、将来の年金額については関心はあるものの、どこで調べたらいいのか分からない、もしくはどうやって計算したらいいのか分からない、という方が多いのではないかと思われます。

 

2.女性より男性の方が公的年金のことをよく知っている。

 

Q1~Q4において、40代以下の層は女性より男性の方が「知っている」と答えた割合が多くなっています。

 

この結果も意外です。

年金の知識に男女の差など関係あるのでしょうか?

 

いえ、知識の差よりも、もっと別の所に理由があるかも知れません。

そこで、男女別の平均年金受給額を見てみましょう。

 

すると、男女間で年金受給額に大きな差があることが分かります。

厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳から受給する厚生年金(1号)の月額平均は、男性が170,391円に対し、女性は109,205円。

実に月6万円強の開きです。

 

そこから推察すると、男女間の知識の差は、単に知っているかどうかではなく、「男性より女性の方が平均的な公的年金の受給額が少ないため、関心が薄い」ことが理由ではないかと考えられます。

 

(老齢)厚生年金の受給額は、ごく簡単に言えば「現役中に受け取った給与と賞与の平均」が高ければ高いほど、そして現役期間が長ければ長いほど、増加します。

 

つまり、女性の社会参加が以前より進んだ、と言えども、まだまだ年金受給額に十分反映されている、とは言えず、それが年金の知識に関する男女の差に表れているのではないかと考えられます。

 

3.50歳代の公的年金に関する知識が思ったより低い

 

これは一番驚きました。

50代に入ると、公的年金の受給開始年齢(繰り上げすれば最短で60歳から)もいよいよ近づきます。 

 

しかし、結果はQ1~Q4ではどれも50%割れ。

Q1「いくら受け取れるか」に至っては、男女とも4割を割っています。

 

そして最も驚いたのはQ4「何歳になったら年金をもらえるか」です。

受給年齢が近づいているのに、いつもらえるかを知っているのはほぼ半数。

 

50歳以上であれば、日本年金機構から年1回送られてくる「ねんきん定期便」には、65歳時点で老齢年金の見込額が記載されます。 

 

ここを見れば一目瞭然なのですが、実際はあまり知られていない、ということかも知れません。

 

50歳以上の方に送られるねんきん定期便には、65歳時点の年金受給予定額が記載される。

各設問の回答(要約)

最後に、各設問について解答を簡単に記しておきます。

(原則のみ。 例外規定は一切省略しています。)

 

Q1 「いくら受け取れるか」

(老齢基礎年金)

20歳からの保険料納付年数によって変わります。 満額を受給するには40年間の納付期間が必要です。 

 

(老齢厚生年金)

前述の通り、「現役中に受け取った給与と賞与の平均」と「現役期間(=保険料納付期間)」によって変わります。

 

Q2 「自分が何号の被保険者か」         

職業などにより、3つに分かれます。

 

(第1号被保険者)

農業者・自営業者・学生・無職の方などが対象です。 この方は国民年金に加入します。

 

(第2号被保険者)

会社員・公務員の方などが対象です。 この方は国民年金と厚生年金に加入します。

 

(第3号被保険者)

国内に居住し、第2号被保険者に扶養されている配偶者が対象です。 この方は国民年金に加入します。

 

Q3 「公的年金を受けるために必要な加入期間」

10年の加入期間(保険料納付期間+保険料免除期間など)が必要です。

 

Q4 「何歳になったら年金をもらえるか」     

原則65歳です。 ただし、60歳への繰り上げ、75歳までの繰り下げが可能です。

 

Q5 「加入している公的年金の種類」

日本の公的年金制度は「2階建て」になっています。

すなわち、20歳以上60歳未満のすべての方が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員の方が加入する厚生年金保険の2つです。

つまり、会社員の方であれば、国民年金と厚生年金に加入していることになります。

 

 

(筆者について)

神奈川県横浜市で「人生の転機における財産やお金の問題」の解決支援を行うZ Financial & Associatesを運営しています。

 zfinancialassoc.com

 

(注釈)
※1 金融広報中央委員会(知るぽると)金融リテラシー調査(2022年)

www.shiruporuto.jp

※2 金融広報中央委員会(知るぽると)家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)

www.shiruporuto.jp

 

 

 

資産運用とは「やらなければいけない」もの? 始める前に自分に問いかける3つの質問

資産運用をやらなければならない、というプレッシャー

 

私がファイナンシャルプランナーとしての仕事を初めて間もない頃、資産運用の経験がないお客様から、こんな質問を頂いたことがありました。

 

お客様: 「やっぱり、資産運用はやった方がいいのでしょうか?」

 

これに対して、私の答えは、

 

私: 

「人によってまちまちですが、もし、長期に渡って運用する見込みがあれば、始めるのは悪くない選択です。」

 

すると、お客様はため息をついてやや伏し目がちに、

 

お客様: 「やっぱり、そうなんですね・・・」

 

そう答えました。

 

そこで、もう少し詳しくお話を聞くと、

 

「怖いし、知識もないので、できれば資産運用はやりたくない。」

「しかし最近、友達が老後の準備として資産運用を始めて盛り上がっている。」

「老後のために資産運用をしなければならないのか、と不安になった。」

 

と、心の内を正直にお話してくれました。

 

このお客様のように、「資産運用はやらなければならないもの。」と考えて不安になる方がいらっしゃいます。

 

特に、これから子どもの教育費や家の購入、老後の資金など将来のイベントが待っている方に当てはまります。

 

もし、「資産運用はやらなければならない」とプレッシャーを感じている方は、慌てて金融機関や証券会社などで金融商品を購入する前に、これから申し上げる3つを、ご自身に問いかけてください。 

 

万能薬ではありませんが、きっと効き目はあるはずです。

 

問いかけ1: 社会の動きに惑わされていないか?

 

資産運用をやらなければいけない。

 

そんな考えを持つきっかけは、何も資産運用に積極的な友達や知り合いだけではありません。 私たちを取り巻く社会も影響します。

 

例えば、

 

2019年には、安心の老後を迎えるには2000万円が必要、という、いわゆる「老後2000万円」問題がありました。

 

同じ2019年には公的年金財政検証が行われ、今後日本経済が想定以上に成長しなければ、将来受け取る年金は今のレベルより下がる可能性があることが示されました。

 

そして2020年からはコロナが始まり、2022年にはウクライナ危機が到来。

緊急事態宣言やまん防の発出で経済状況は停滞し、2022年7月の消費者物価指数は前年比で2.4%も上昇。 

 

一方、株式市場は高値に沸いています。

 

2021年9月14日には日経平均がバブル後最高値の3万795円を付け、現在も2万7000円~8000円で推移しています。

 

経済は悪化、賃上げや年金には期待できず。

なら、高値の株式市場に乗り遅れまい、との気持ちが湧くのは無理もありません。

 

しかし、どんなに社会が投資に向いた環境に動いたとしても、投資をするのは自分です。 また、投資に伴うリスクを負うのも自分です。

 

自分はなぜ資産運用をするのか。

なぜ、資産運用が必要なのか。

 

社会の状況や周りの意見に流されず、まずは自問してみましょう。

 

問いかけ2: 将来何をしたいのか。そのために資産運用が本当に必要なのか?

 

「資産運用は、あれこれ考えずに、まず初めてみること。」

 

初心者へのアドバイスとして、このような意見もあります。

 

また、

 

「資産運用を始めるのに、目的なんて必要ない。」

 

いわゆる「ゴールベース」の資産運用に対する反対意見として、このような意見もあります。

 

どちらも正論だと思います。

 

しかし、資産運用を本格的に始めるには、やはり、あれこれ考えたり、何のために資産運用をするのかについては考えを巡らせる必要があると思います。

 

そして、こうした他人の意見に惑わされず、自分がどんな目的で、何を実現したいのかを、自分の目線で考えて頂きたいと思います。

 

・ 自分の老後のためなのか。

・ 子どもの教育費のためなのか。

・ 投資は余った資金だけに留めるのか。

・ 夫婦の生活をより楽にするためなのか。

 

このような問いに対する答えが、自分なりの運用コンセプトや目標です。

これらを持っていると、資産運用とは本来「しなければいけないもの」ではないことに気づくことができるはずです。

 

問いかけ3: 家計の今後の見通しが理解できているか?

 

人生、何が起こるか分かりません。

将来の先の先まで、1円単位で家計を見通すことなど不可能です。

仮に見通しがあっても、その通りにいくことはむしろ稀なことです。

 

しかし、それでも見通しを持っておくことは無意味ではありません。

むしろ、将来を冷静に見ることができ、不安を和らげることができるはずです。

 

おおまかであっても、今、いくら資金があって、どんな収入や出費があり、それが〇〇年後まで続いた場合、資金がどのくらい手元に残るのか、または失われるのか。

 

こうした情報が頭に入っていることで、自分がどんなリスクを抱えていて、それに対してどんな対処をすればいいのかを整理することができます。

 

「資産運用をしなければならない。」

 

このような不安に駆られる原因は、今の資産や収入・出費、将来の見通しなどが整理されていないまま、社会の、もしくは周りの情報に振り回されていることにあるのではないでしょうか。

 

資産運用とは「安心を実現するツール」

 

資産運用はすべきかどうか。

本文の冒頭に述べたことと繰り返しになりますが、その答えは、人によってまちまちです。

 

しかし、もし長期に渡って運用できる見込みがあれば、始めるのは悪くない選択です。

 

資産運用とは「しなければいけない」ものではありません。

資産運用とは、あくまで「それをすることで、より安心して人生を送ることを可能性にするツール」の一つであるべきです。

 

それでは、資産運用を「安心のためのツール」として使うためには、何から手を付ければいいのか。 

 

そんな疑問にお持ちの方の期待に応えるのがFPの仕事です。

まずは無料相談を行っているFPに相談してみるのも一つの手です。

 

なお、当事務所でも初回無料相談を行っていますので、お気軽にお問合せ下さい。