レモン一つでレモネードとレモンパイとレモンケーキを作る!

FP(兼USCPA)がレモンをレモネードにする(逆境を転機に変える)ヒントを書き連ねます。 毎週月・木曜日に更新。

人生の可能性を狭める「アンコンシャス・バイアス」。 どうやって乗り越える?



「男性は仕事をして家計を支えるべきだ。」

 

もしこう問われたら、あなたは同意しますか?

 

「いいや、そんなことはない。30年前ならともかく、男女平等が進んだ現代なら、そうとは言えないはず!」

 

私もそう思います。

頭では。

 

しかし、深層心理ではそうではありません。

 

そのことに気付いたのは、人生の大きな転機を経験した時です。

その価値観のために、大変苦しみました。

 

このような性別に関する偏った価値観は、時に人生に大きなマイナスとなります。

それをどうやって乗り越えればいいのか。 

 

自身の経験を元に、そのヒントをご紹介します。

 

 

なぜ私が、男性は仕事をして家計を支えるべきだと思うようになったか。

 

私が20代を過ごした1990年代。

バブルが崩壊したとは言え、金利は今より高く、給料も伸びていました。

 

根拠のない自信を蓄え、私は本気でこんな考えを持っていました。

 

「僕の妻になる人は、大船に乗ったつもりで、何も苦労しなくていいぞ。」

 

でもそれは、私だけの勝手な思い込みではありません。

周りもそうでした。

 

男の先輩と飲めば、今度のボーナスはまた伸びた、〇百万超えだ、など、景気のいい話も多かった時代です。

 

一方、採用では男性が総合職、女性が一般職と、男女差が存在し、女性は寿退社でどんどん辞めていきました。

 

(加えて、職場結婚すると夫婦が同じ職場にはいられない、というルールも存在し、異動させられるのは女性でした。)

 

そんな環境で20代を過ごした私。

思い込みが深層心理に染みついてしまうのは、当然だったように思います。

 

時代は変われど、深層心理は容易に変わらない。

 

しかし、時代は少しづつ変わります。

1999年には、社会における男女平等を推進する「男女共同参画社会基本法」が施行。

 

総合職と一般職のような男女での採用枠などはほとんどの企業で廃止され、「夫が働き、妻が専業主婦」という家庭は右肩下がりに減っていきます。

 

出典:内閣府男女共同参画白書(概要版) 平成30年版」https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/gaiyou/html/honpen/b1_s03.html

 

しかし、幸か不幸か、私は転職後も給料が伸びていたため、「男性は家計を支えるべきだ」の価値観に気付くこともなく、変える必要もありませんでした。

 

人生の転機に初めて顕在化する「価値観」の罠

 

人は痛い目に遭わなければ、自分の深層心理にあるものを見詰めようとはしません。

それに気づいたのは、私が会社を辞めたときでした。

 

私が会社を辞めることで、当然収入も減ります。

同時に、それは「男が家計を支える」から一時的に離れることを意味しました。

 

ここで、染みついた「価値観」が一気に苦しみに変わります。

 

寛大な妻は私を責めることはありませんでしたが、私は自分が許せません。

その理由がはっきり分からないまま、苦しく、いつもイライラしたり落ち込む毎日が続きました。

 

自分の中に染みついた「男が家計を支える」価値観が苦しみの根源だった。

そのことに気付くまで、それから数年の歳月を要しました。

 

無意識の思い込み=アンコンシャス・バイアス

私が捉われていた「男性は仕事をして家計を支えるべきだ。」のような無意識の思い込みは、近年「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれています。

 

内閣府が今月、20~60代の1万906人に行った「アンコンシャス・バイアスに関する意識調査」の結果を公表しました。

 

すると、男女ともに最も多く「そう思う」、「どちらかと言えばそう思う」と回答した質問は、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」だったそうです。

 

令和4年度 内閣府「性別による無意識の思い込み (アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」より抜粋

 

この思い込みは、男性・女性共に年代が上がるほど強くなる傾向があり、60代になると男性では約6割女性でも5割強が、「男は仕事をして家計を支えるべき」と考えており、この思い込みは40代以上で根づいていることが伺えます。

 

内閣府「令和4年度 性別による無意識の思い込み (アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」より抜粋

 

アンコンシャス・バイアスは誰にでもある。ただし自覚が必要。

 

前述の調査結果から分かる通り、アンコンシャス・バイアスは(自己弁護になってしまいますが…)誰にでもあるものです。

 

また、それがあること自体、悪いことではないと思います。

 

ただし、アンコンシャス・バイアスがあることに、常に自覚的であるべきです。

 

なぜなら、それに気づかないでいると(私が会社を辞めた時のように)新たな一歩を踏み出すときに大きな苦しみとなったり、壁になってしまうからです。

 

「定年まで会社に勤めあげる」キャリアプランは、とうに崩れたと言われて久しいですが、それに代わるのは、(2016年のベストセラー「LIFE SHIFT / 100年時代の人生戦略」でも述べられている通り)何度もやり直したり、新たなことに挑戦する人生です。

 

そんな時代を生き抜くためにも、アンコンシャス・バイアスにできるだけ捉われない知恵が必要です。

 

アンコンシャス・バイアスへの3つの対処法。

 

では、アンコンシャス・バイアスにどう対処すればよいのか。

以下は、内閣府共同参画局が作成したパンフレットからの抜粋ですが、参考になるので、抜粋します。

 

対処法1: 決めつけない、押し付けない。

「普通そうだ」、「たいていこうだ」、「そんなはずはない」、「どうせムリ」、「こうであるべき」など、決めつけ、押し付け言葉には要注意です。

 

たとえば、この仕事は男でなければ無理だ、というような考えが頭に浮かんだら、それはアンコンシャス・バイアスではないか、と疑ってみてください。

 

対処法2: 相手の表情や態度の変化など「サイン」に注目する 

自分の言動によって、相手の表情が曇ったり、一瞬声のトーンが変わるようなことがあったら、それは自分のアンコンシャス・バイアスのせいかも知れません。

 

その場合、素通りせず、相手へのフォローをしてみてください。

 

対処法3: 自己認知

アンコンシャス・バイアスは、脳が自分にとって都合のよい解釈をすることで起きています。

 

そこで、自分がそんな「思考のクセ」に陥っていないかを確かめるために、1~2週間ほど、アンコンシャス・バイアスに気付いた際メモを取るのがよいでしょう。

 

見開きノートを使った、アンコンシャス・バイアスへの対処法

 

対処法3については、私も似たようなメモを取っていたことがあります。

 

その方法は、見開きノートを使います。

まず左側に、今日起こった嫌な出来事(例えば、会議中に相手が自分の意見に反論してきた)、右側に、それに対して自分は最初どう思ったか(例えば、ムッとした、そんなことはその場で言うものではない)を書きます。

 

その上で、その両方を第三者になったつもりで、もう一度眺めてみます。

 

すると、自分が陥っていた「アンコンシャス・バイアス」に気付くことがあります。

(例えば、会議の場で知らず知らずの内に、自分と同じ意見だけを求めていた)

 

この方法は、自己認知療法と呼ばれる心理療法を参考にしたものです。

 

もし、少しでも「アンコンシャス・バイアス」に苦しんでいる、と自覚した時、試してみてください。

 

(筆者について)

神奈川県横浜市で「人生の転機における財産やお金の問題」の解決支援を行うZ Financial & Associatesを運営しています。