レモン一つでレモネードとレモンパイとレモンケーキを作る!

FP(兼USCPA)がレモンをレモネードにする(逆境を転機に変える)ヒントを書き連ねます。 毎週月・木曜日に更新。

後世に遺す財産がなくても大丈夫。それなら「生き様」を遺せばいい。

(本記事の内容は、特定の個人が推測できないよう、配慮しています。)

 

人生いろいろ、財産もいろいろ

私は普段、個人や法人の「財産やお金」に関する様々な仕事をしています。

その中の一つに「相続」があります。

 

相続手続きというと、役所、年金事務所、金融機関、証券会社、税務署、法務局、家庭裁判所、警察署、陸運局など、一般的に言われる「カタい」お仕事の所とのやりとりが中心となるため、仕事は複雑ながら「定型的」な面があります。

(それだけミスが許されない仕事、という意味です。)

 

一方、「定型」からは大きくかけ離れたものがあります。

それは、ご遺族からお聞きする、故人のこれまでの「人生」と遺した「財産」です。

 

歌にもある通り「人生いろいろ」であることは、ご存知の通りです。

そして、遺される「財産」の額。 これも「いろいろ」です。

 

お見事!」と拍手したくなるほど、限りなくプラマイゼロで財産を使い切った方もいれば、ご遺族だけでは使い切れないほどの財産を遺した方もいらっしゃいます。

 

将来財産を遺せるかは、心配事の一つ

一方、今こうして生きている私たちは、「将来どれだけ財産を後世に遺すことができるか」ということに頭を悩ませます。 

 

個人の方であれば、

「できるだけたくさん、子どもや孫にお金を遺してあげたい」

「たくさんいる相続人同士で揉めないように、現金化できる財産を遺したい」

「資産運用で遺せる額を増やしたい。」

 

事業を経営している方であれば、

「事業の運転資金や設備投資に回せる資金を遺しておきたい」

「株式の評価価値をできるだけ高めておきたい」

「生命保険を活用して節税できるようにしておきたい」

 

これらの希望は、努力と工夫次第で叶えることができる場合があります。

(そしてこれらを叶えるお手伝いをすることも、私の仕事の一つです。)

 

しかし、それが叶わない場合もあります。

そもそも、日々の生活がギリギリで、望むだけの財産を遺せる見込みすらない場合だってありえます。 そう考えると、悲しく不安になるものです。

 

内村鑑三著「後世への最大遺物」

 

私を含め、そんな心配を抱えている方に、「そっと」おすすめしたい本があります。

それは、キリスト教思想家(無教会主義を唱えた事で知られる)の内村鑑三(1861~1930)による「後世への最大遺物」という本です。

(以下、ネタバレ部分を含みます。) 

 

この本が書かれたのは、今から125年前の明治27年(1894年)。

内村鑑三キリスト教徒向けの夏季学校(今でいうYMCAでしょうか)にて講演した内容を収録したものです。

 

大昔の本ですが、「お金を遺せない」悩みには効く内容です。

 

財産(お金)は大事。 遺せればよい。

内村鑑三はこの本の中で、大きく「後世に遺すべき」4つのものを挙げています。

まずは「財産(お金)」。

 

後世へわれわれの遺すもののなかにまず第一番に大切なものがある。 何であるかというと金です。 われわれが死ぬときに遺産金を社会に遺して逝く、己の子供に遺して逝くばかりでなく、社会に遺して逝くということです。 それは多くの人の考えにあるところではないかと思います。

 

お金以外のもので遺せるものを探すはずが、いきなりお金が大切なんて、面食らってしまいます。

 

しかし内村鑑三は、「お金」の大切さを全然否定しません。(ここが彼の凄いところです。)

 

遺せるのなら「お金」を遺した方がいい。 そう言い切っています。

 

しかし、こうも言っています。

「誰もがお金を貯める力を持っている訳ではない。できる人はある種の天才である。」

 

お金が駄目なら、「事業」を遺す。

 

では、それができない人は何を遺すべきか。

それは、世のため人のためになる「事業だ、と言います。

 

(前略)それでもし金を遺すことができませぬならば、何を遺そうかという実際問題が出てきます。(中略)考えてみますと、事業です。 事業とは、すなわち金を使うことです。

 

その例として、箱根で貧乏暮らしの農民兄弟が「この有難き国に生まれたからには何かを後世に遺さねばならない」と言って、何十年もかけて山をくり抜いて湖水の水を取り出し、水田を作り上げた話が出てきます。 

 

しかし、それでも事業をするには、「特別の天才が必要で、また社会上の地位」が必要です。 誰にでもできる訳ではありません。

 

お金も事業も駄目なら、思想を遺す。

 

そこで、お金も貯められず、事業もできなくても、できることがあると言います。

それは、「思想を伝えること」です。

 

(前略)もし私に金を溜めることができず、また社会は私の事業をすることを許さなければ、私はまだ一つ遺すものを持っています。(中略)私の思想です。(中略)私はこれを実行する精神を筆と墨とをもって紙の上に遺すことができる。

 

つまり、自分の思想、考えを書き記し、伝えることならできる、ということです。

 

この「思想を遺すこと」で後世に偉大な影響を与えた例として、「ユダヤのごくつまらない漁夫」や「その他世に知られない人たち」によって書かれた「新約聖書」を挙げています。 ご存知の通り、新約聖書旧約聖書と合わせた世界一のベストセラーです。

 

これはかなり極端な例ですが、内村鑑三は、私たち凡人にも思想なら遺せるからとにかく書いて見なさい、と勧めています。(この言葉は、こうして悩みながらブログを書いている私の励みです。)

 

(中略)それゆえにただわれわれの心のままを表白してごらんなさい。 そうしてゆけばいくら文法が間違っておっても、世の中の人が読んでくれる。 それがわれわれの遺物です。 もし何もすることができなければ、われわれの思うままを書けばよろしいのです。

 

しかし、書いて表現すること、そして、それが世の中に読まれることは、誰でも成し遂げられるわけではありません。 

 

お金も事業も思想もダメなら、生き様を遺す。

 

それでは、金もない、事業も興せない、思想を伝えることもできない。

それではどうするか。 実は、この3つと違い、誰でも遺せる「最大遺物」がある、といいます。

 

それは、「この世は歓喜である、ということを実践して生きた生涯」を遺す、ということです。

 

(中略)これは誰にでも遺すことのできるところの遺物で、(中略)それは勇ましい高尚なる生涯であると思います。(中略)この世の中は悲嘆の世の中でなくして、歓喜の世の中であるという考えをわれわれの生涯に実行して、その生涯を世の中への贈り物としてこの世を去る、ということであります。

 

その具体的な例として、二宮尊徳(幼名金次郎)が出てきます。

勤勉の象徴として、薪を背負いながら本を読み歩く子ども時代の像は有名ですね。

 

 

二宮金次郎

金次郎は孤児となり、いじわるな叔父に預けられてしまい、仕事が終わった夜に大好きな本を読むことを、「(灯りに使う)菜種油がもったいない」という理由で禁じられてしまいます。

 

そこで、金次郎はどうしたか。

 

誰もいない川辺に行って菜種をまき、1年かけて菜種を収穫し、油屋へ行って油と交換し、その油で本を読んだ、ということです。 やがて大人になった金次郎は、日本各地の村を事業で再興するなど、多くの実績を残します。

 

この金次郎の例のように、さまざまな困難に打ち勝ってでも、何かを実践した生涯。それこそ、後世に遺すべき「最大遺物」だと内村鑑三は言います。

 

二宮尊徳の例はかなり極端な例かも知れません。

しかし、「立派に一生懸命生きた」生涯、つまり「生き様」なら、誰もが遺せるものではないでしょうか。

 

私自身は、この「生き様」をこう考えています。

 

故人が、いい生涯だったと思える生涯をおくったこと。

そして、その生き様が、遺された者の心に残るものであること。

 

お金を遺すことができれば、それに越したことはありません。

でも、「本人は満足だったよね。」とご遺族の方がお話しているのを聞くたび、故人が納得できる生涯を送ったことが、最高の遺物ではないか、と思うのです。

KDDIの大規模障害、一人あたり200円の返金は妥当?


7月初めに起こったKDDIau)による大規模障害障害。

その対応策や返金額に関する会社説明会が7月29日(金)に行われ、私も視聴しました。

(現在、KDDIのホームページから当日の模様がYoutubeアーカイブ視聴できます。)

このKDDIの発表について、その概要に加え、筆者の解説を交えてお伝えします。

 

 

お詫び返金は、妥当な額。

会見の概要(抜粋)

事故発生直後にKDDIの高橋社長は、「顧客に対して何らかの補償を行う」と発表していましたが、その具体的な内容が公表され以下の通りとなりました。

 

A  契約約款にもとづく返金(対象者271万人):

【返金額】 基本料金の2日分。(返金額は平均100円程度。)

【計算根拠】52円(契約者の基本料金平均額)×2日 ≒ 100円

 

B お詫び返金(対象3,589万人):

【返金額】一律200円

【根拠】 1の基本料金平均額(52円/日)をもとに、以下の通り計算:

  1.  200円のうち156円は、52円X3日で算出。(「3日」は、復旧までにかかった62時間を3日間でカウント)
  2.  200円のうち残りの44円は、「お詫びの気持ちを込めて」追加。

 

解説

1.については、ユーザーがauと契約する際に合意する「au通信サービス契約約款」に記載がある内容にそのまま基づくものです。 妥当というよりも、契約書の決まりに沿って、当然支払われるべきものです。

 

au(LTE)通信サービス契約約款 P44より抜粋)

 

2.は、契約にない補償です。 KDDIが自主的に行うもので、かつ「通信障害で直接の被害を受けたかどうか」に関わらず返金する、というものです。

 

「いくら返金するか」の決まりがないので、社長以下かなり悩んだそうですが、1の契約上の補償額をもとに、「お詫びの気持ちと、きりの良い数字にするために」+αしたものです。 実際にユーザーがどれだけの被害を被ったかを数値化するのは不可能ですから、これも妥当な線ではないでしょうか。

 

なお、この発表に対してSNSなどでは、「たったこれだけ?」という声以上に「妥当な額だ。」という声が見受けられます。 上記の返金額の算出根拠が明らかになったことで、自然な流れと思えます。

 

お詫び返金や、事故の対策費用が今後の料金に上乗せされることはない。

会見の概要(抜粋)

  • 総返金額は73億円
  • 返金により業績の下方修正はしない。(経営努力でカバー)
  • 料金改定はなし

 

事故原因はヒューマンエラー(人為的ミス)

会見の概要(抜粋)

  • 多摩に昨年新設した全国中継網ルーターのメンテナンス時に、本来使うべきではない「古い手順書」が使われてしまった。
  • その結果、ルーターの経路誤設定が発生し、数分の間に通常の7倍のトラフィックが発生(輻輳状態)。他拠点にも影響が波及し、全国的な障害へつながった。
  • 異常状態となったVoLTE交換機を切り離すことでようやく輻輳状態が解消。

 

解説

事故原因は完全にヒューマンエラーです。 しかし、人の手が入る工程では、どんなに対策を行ってもエラーを完全になくすことはできません。 

そこで、対策としては、「ヒューマンエラーが起こった場合、その影響を最小限にとどめるための技術」を考える必要がありますが、この点でも不十分だった、といえるのが今回の事故です。

 

auユーザーは他社へ乗り換えるべきか。

会見の概要(抜粋)

「今回起きた大規模な障害によって、お客様の一部が乗り換えすることも仕方ないと思っている。」

 

解説

今回の大規模障害では、110や119など緊急用の通信にも影響したことを考えると、「いざという時につながらない」という不安が増した方は多いと思います。

 

IT Mediaの調査によれば、通信キャリアを選ぶ理由の第1位は、「電波の通信、品質、安定性」となっており、今回の件でこの点に不安を感じた方は、auからの乗り換えもやむを得ないかと思います。

 

ただし、今回の原因となった「ヒューマンエラー」は、どの携帯会社でも今後100%起こらないとは言えないものです。 乗り換えたからと言って、通信が絶対安全、とはならないことも、肝に銘じておくべきでしょう。

家族でよく進路について話す子は、お金に強くなるって本当?

お金の教育を受けていない私たちが、どうやって子どもに教えればよいのか。

「お金のこと、子どもにどう教えていますか?」

 

こう問われると、ドキッとする方は多いのではないでしょうか。

なぜなら、私を含めた大抵の大人は、「いつから、どのようにお金のことを子どもが学ぶべきか」を子どもの頃に学んでいないからです。

 

では、そんな私たち大人が、子どもにどうやってお金のことを教えればいいのでしょうか? 夏休みとなり、お子さんと過ごす時間も増えた方に向けて、そんな疑問点に答えてみます。

 

親が最先端の「お金」の世界に精通する必要はない。

「子どもにお金を教えるに当たり、まず親がきちんと知っておかなければならない。」

そう考える方もいらっしゃると思います。

確かに一理ありますが、それが絶対条件ではありません。

 

お金、特に経済や金融の世界は、他の産業と比べても特に変化と進化の激しい業界です。

 

金融の世界はAI、ブロックチェーン、仮想通貨、メタバースなど、新たな概念が次々と登場し、経済はロシア・ウクライナ問題など、これまで予想もしなかった事態に直面しています。 そして、更に進む少子高齢化に合わせた新たな社会保障や年金制度の再設計など多くの課題も抱えています。

 

そんな中、これらの技術を全て追いかけ、将来大人になる「子どもの身」になって未来を見据える、というのはよほど経済や金融に興味がある方でない限り、難しいことです。

 

それに、これらを身に付けてから子どもに教えよう、と考えていたら、いつまで経っても教えられません。(身に付けている内にも、金融の世界は進化し続けます)

 

従って、親の知識が、お子様の「お金の教育」をする上で最も大切なことではないのです。

 

家族で進路のことをよく話す子は、お金に強くなる?

では、親の知識より大切なことは何でしょうか?

それは、お金に限らない内容の、家族での会話です。

 

やや古いデータですが、興味深い調査結果があります。

 

2015年に金融広報調査委員会(知るぽると)が公表した「子どものくらしとお金に関する調査」によれば、「自分がつきたい仕事」、「将来の夢」、「社会のこと」、「進路のこと」、「お金のこと」などをよく家族で話すと回答した子どもは、以下の傾向があることが分かっています。

 

  • おこづかいの使い方について計画を立てる
  • 何かを買うときに必ず価格を調べる
  • おつりをもらったら、必ず確認する
  • レシートをもらったら、金額を確認し、持ち帰る
  • 現在よりも将来の方が大事と考える
  • 気になったことをすぐ調べる

しるぽると「子どものくらしとお金に関する調査」より。

 

どれも、子どもに限らず大人にとっても、「お金」に強くなる上でのとても重要なスキルです。 特に、「現在よりも将来の方が大事と考える」は、そのまま子どもの貯蓄する力につながっていきます。

 

一方で、この調査結果だけを持って「子どもがお金に強くなる上で最も大切なのは、家族の会話だ」とも言い切れません。 調査はあくまでサンプルに基づく調査です。

 

しかし、お子さんが家族の会話によって行動が変わる、という点では子育ての経験からも実感できるのではないでしょうか。 

 

ちなみにお金や物の値段の会話をよくする我が家では、息子(4歳)が何かを買ってもらうたびに、「これは安い、高い」を口にするようになっています。(いいのか悪いのかはまだ分かりませんが…)

 

うんこドリルは、お金教育の救世主?

それでも、家族の会話だけでは、お金の計算をしたり、より複雑なお金の問題を解決する力を身に付けるには不十分、と考える方も多いかと思います。

 

幸い、子ども用の「お金」に関する座学用テキストはたくさん出版されています。

その際たるものが、大ヒット商品「うんこドリル」です。

我が家で使っている「うんこドリル おかね」

うんこドリルは、実際のお金(硬貨やお札)以外、登場人物、買ったり売ったりする商品も全部、うんこのイラストに満ちています。 

 

この大人気テキストの影響力は、今や子どもへの金銭教育を進める政府をも動かしました。 

金融・証券業の監督官庁である金融庁は「うんこお金ドリル」、財務省主税局は「うんこ税金ドリル」を出版するに至っています。 

(なお、報道によると、これに続いて今度は企業の競争を監視する「公正取引委員会」が、「うんこドリル”競争の原理”」を出版したそうです。)

 

何もうんこドリルが全てではありませんが、お伝えしたいのは、楽しそうなテキストと家族の会話が組み合わさることで、子どもの「お金」に関する力はより伸びるのではないか、ということです。

 

方法と手段は手に届くところにある。

 

「いつ、どうやって子どもはお金のことを学ぶべきか。」

記事の冒頭で、私たち大人はこの点で教育を受けていない、と書きました。

 

しかし、この問に対する答えは、私もはっきりとは分かりません。

(調査すれば、傾向は見えるかも知れませんが、それはただ一つの「正解」ではありません。)

 

ただ一つ言えることは、私たち親が教えるための方法と手段、つまり「家族との会話」、そして「質の良い教材」は、手の届くところにある、ということです。

 

まずは肩肘張らず、始めてみてはいかがでしょうか?

わたしも楽しみながら、子どものお金を学んでいきます。

 

友人から投資を勧められたらどう対処する?(TKO木本さんの件から学ぶこと)

 

TKO木本さんの件

7月23日、松竹芸能所属のお笑いコンビ、TKOの木本 武宏さんが「投資トラブル」に関わったとして、松竹芸能を退社したことが公表されました。

 

この「投資トラブル」とは具体的に何なのか、現在さまざまな憶測が流れていますが、はっきりしたことは分かっていません。

 

松竹芸能の発表によると、そもそもTKO木本さんが加害者なのか、被害者なのかすら分からない状況とのことです。

 

(前略)7月初旬に個人的な投資活動に関しトラブルが発生しているのではないかという情報が弊社に届いた為、本人への事情聴取を重ねてまいりました。 結果、一部の情報は得られたものの、全容の把握には至りませんでした。


また、事情聴取と並行し、弊社も独自で情報収集を行ってきましたが、具体的にどういったトラブルが起きているのか、本人がご迷惑をお掛けしている側なのか、被害を受けている側なのか等の全容の把握には未だ至っておりません。

松竹芸能ホームページより抜粋)

 

現在の過熱した報道やSNSにあふれる情報には、TKO木本さんが仲間をそそのかした「犯罪者」のように扱っているものもありますが、TKO木本さんは「被害者」かも知れない訳です。

 

その一方で、損害を被ったTKO木本さんの仲間の「事実」もはっきりしていません。

なぜ、その人達はよく分からないスキームに「投資」したのでしょうか。 

投資に少しでも興味がある方は、むしろこちらの方が気になると思います。

 

それでは、私たちが仲間や友人から投資話を持ち掛けられたときに「二の舞」にならないためにはどうすればいいのでしょうか?

 

1.投資判断を「友人の人柄や性格」で決めない。

 

TKO木本さんの件では、実際に投資して損失を被った「仲間」として、平成ノブシコブシの吉村さんや、野生爆弾のくっきーなどが取り沙汰されています。

 

特に吉村さんは、1年ほど前からTVで「仮想通貨でほぼ全財産を失った」と(半ばネタのように)話していて、この件との関連が疑われています。

 

芸人同士の仲間意識やタテのつながりは強く、恩を受けた先輩芸人から投資を勧められれば、容易に断れないことでしょう。

 

仮に「恩」がなくても、投資と全く関係ないところで得られた信用、例えば「世話好き」だったり「飲み会に誘っても断らない」などが、投資に必要な「冷静な判断力」を鈍らせてしまったのかも知れません。

 

もし、私たちが仲の良い友人から投資を勧められたら、どう対処すべきでしょうか。

その際は、一呼吸おいて、友人の「人柄」、「恩」、「性格」などを脇において、勧める投資内容のみに集中することが大切です。

 

2.投資対象に関する内容以外の言葉に耳を傾けない。

 

「投資」とは詰まるところ、比較的安全な「預金、現金」を、時価が変動する商品に投じることです。 

 

つまり、安全資産をわざわざ「リスク」に晒して収益を得るのですから、少しでも損失を避けるために多くの情報が必要になります。 それは、これまでどれだけ「儲かったか」だけに留まらず、

  • どのような要因が収益率に影響したのか。
  • 価格が上下何%変動したのか。
  • マクロ要因(たとえば戦争や中央銀行の利上げ)が価格にどう影響したのか
  • 1年、3年、5年とスパンを区切ったときのそれぞれの収益率とリスクは

などを総合的に考えて、初めて(遊び以上の)投資ができるものです。

 

これらを全て頭に入れて判断しようとすれば、友人の「誉め言葉」や「昔よしみ」の情緒が入る余地は全くないはずです。

 

3.「人からの紹介には乗らない」と事前に決めてしまう。

 

それでも、

 

「あれだけよくしてくれた人を、無下に断るなんてできない。」

「あれだけ熱心に説明してくれたんだから、断るのが申し訳ない。」

 

そう考えるのも人情、というものです。

 

もし、ご自身がそう考えてしまいがちな性格と思うようなら、普段から呪文のように「人からの紹介には絶対乗らない」と心に言い聞かせておくのも有効です。

 

ちょっとおかしな方法かも知れませんが、投資はいつ勧められるか分からないもの。 事前に心の準備をしておくに越したことはありません。

 

友人との関係を破綻させないために

 

今回の報道に触れて、改めてTKOのコントを視聴しました。

(現在Youtubeでは、「TKO」で検索すると今回の事件の動画ばかりが出てきて、本来のネタ動画を探すのが大変でした。)

 

笑えました。 面白いです。 特に、裏口入学ネタはお金に汚い人の話で、笑えないのに笑えました。 そんな才能にあふれる人が、芸と関係ないところで話題になってしまうのは、残念の極みです。

 

最後に、今回の「教訓」をもう一度記します。 

 

  • 投資判断を「友人の人柄や性格」で決めない。
  • 投資対象に関する内容以外の言葉に耳を傾けない。
  • 「人からの紹介には乗らない」と事前に決めてしまう。

くれぐれも投資は自分で決めて、自分で判断して、を心がけたいものです。

困難を「受け入れる」ための3つの言葉

転機を受け入れる「言葉」

 

「もうどうにもならない」、「にっちもさっちも行かない」

人生で一度や二度、人によっては何度もそんな修羅場にぶち当たります。

 

そのとき、特効薬のように効くアドバイスをくれる人が傍にいればよいのですが、問題が深ければ深いほど、他人が容易に理解できるものではありません。 むしろ、悩める本人が、誰かに理解して欲しいと思えば思うほど、逆に孤独を深めてしまうこともあります。

 

そんなとき、救いになるのが「言葉」です。

 

普段読みもせず、本棚に長年眠っていた本を、まるで三日ぶりにありついた食事のように「むさぼり」読んだり、今の自分が抱えた辛さに「その場で効く」言葉をかたっぱしからインターネットで検索したり。

 

私も人生の、家庭の、そして仕事の(時に辛い)「転機」に思いがけず衝突したとき、数えきれないほど、本とインターネット検索に救いを求めてきました。

 

あるときなどは、仕事のトラブルで心が張り裂けそうになり、出張中の飛行機の中で涙しながら本を読んだ思い出もあります。(その時読んだ本の中には、ベストセラー「嫌われる勇気:アドラーの教え)」もありました。)

 

何度もこんなことを繰り返している内に、あることに気づきました。

それは、「ありのままを受け入れること」に関する言葉によく出会い、心に響いていることです。 

 

そこで、今日は私が救われてきた「受け入れること」に関する言葉をご紹介します。

 

1.二ーバーの祈り(Serenity Prayer)

God, give me grace to accept with serenity
the things that cannot be changed,
Courage to change the things
which should be chaned,
and the Wisdom to distinguish
the one from the other.

(日本語訳)

神よ、与えたまえ。

静寂とともに変えることができないものを受け入れる気品を、

変えることができることを変える勇気を、

そしてこの2つを見分ける智慧を。

 

アメリカの神学者、ラインホルト・二ーバー(1892–1971)が書いた言葉ですが、この言葉が有名になったきっかけは、アルコール依存症神経症自助グループで使われたことです。 

 

私が何の本で出合ったかは思い出せませんが、この言葉からは、どうすれば辛い転機から早く立ち直るかを学びました。

 

それは直面している問題を、

「私が変えること」

「変えられないこと」

の2つに分けて、

「私が変えられること」だけに集中して取り組むことです。

 

2.ねずみ教のねずみ

あるねずみは、ねずみ教に入り、ねずみ教の教主にいろいろのお供え物をし、お祈りをし、それはそれは熱心に行事にも参加した。

(中略)ところがある日、猫につかまってかじられてしまった。 そこで、息子のねずみは教主に文句を言った。

「あれほど熱心にやっておったおやじが猫に食われて死にました。 神も仏もあるものかと言いながら死んだんです。」

するとこの教主は厳然として言った。

「あれは信心が足らんからじゃ」 

信心が足らんという一言で片づけられた。

それでは、猫に押さえつけられているねずみが食われようとしている場合に「救われる」とはどういうことか。

「それは悠々として食われていくことである。 私の業として悠々として食われていくのである。」

この話は、親鸞の「歎異抄」を解説した本に出てくるもので、救われる、というものの本質を解説したものです。 

理不尽な問題に直面したとき、私も「あれだけ努力してきたのに」とか、「〇〇のために動いてきたのに」と愚痴ったものでした。

しかし、救われることの本質が、「これまでの信仰の深さのお陰で、猫に食べられずに済む」ではなく、「悠々と猫にかじられて死んでいくこと」というのは、とても衝撃的な言葉でした。 受け入れることには、厳しさと覚悟が要るのです。

 

3.明け渡すということ

The signal to surrender comes when we are exhausted from trying to control a situation or win a battle.

(日本語訳)

「明け渡すべき時とは、状況をコントールしようとしたり、戦いに勝とうとすることに疲れたときです。」

患者が死を受容するまでの5つのプロセス(否認、怒り、取引、抑うつ、受容)を記した「死ぬ瞬間」の著書で知られるアメリカの精神科医エリザベス・キューブラー・ロス(1926~2004)が、亡くなる直前に書いた著書「ライフレッスン」に出てくる言葉です。

 

この言葉は前の「二ーバーの祈り」に通じるもので、状況をコントロールできるか、できないかの判断が求められるものです。 

 

しかし、それでもギリギリまでコントロールしようとして疲れ果てたとき、最後には全てを(諦めるのではなく)状況に委ねる(=明け渡す)という選択肢があるのだ、というこの言葉に、救われると同時に勇気をもらいました。

 

受け入れることが、困難を乗り越えるチームを作る

ここまで、「受け入れる」ことの本質を教えてくれる3つの言葉を紹介しました。

これらの言葉はいずれも古いものですが、その本質は現在も変わっていません。

ここ数年、ビジネスの世界では「心理的柔軟性」(Phycological Flexibility)という言葉が浸透しつつあります。  チームの力を最大限発揮するリーダーに必要な力として注目されているものですが、それには3つの力が必要と言われています。

 

1.必要な困難に直面し、変えられないものを受け入れる。

2.大切なことへ向かい、変えられるものに取り組む。

3.それら変えられないものと、変えられるものを客観的に見分ける。

(「心理的安全性のつくりかた」石井遼介著 より抜粋)

 

前述の「二ーバーの祈り」そのものですね。 

二ーバーの祈りは1930年代に書かれたものだそうですが、人が求める「困難に対処する力」の本質は、100年近く経っても何も変わっていないことになります。

 

それだけ、身に付けるのは容易ではないということですが、だからこそ、これらの言葉が人の心に響くのでしょう。

なぜ、節電しても電気代が上がる?(燃料費調整額のしくみ)

節約しても電気代が上がる?

毎年電力代が高くなる夏。

我が家も例年以上に「節電」に励んでいます。

 

リビングの電気はこまめに消し、ダイニングの電気で間に合わせたり。

少しでも風がある日は首に濡れタオルを巻いて、そよ風に当たったり。

仕事も深夜までせず、早く寝て早朝にこなすようにしたり。

 

その努力が実り、電気の使用量は昨年より2割ほど下がりました。

しかし、電気料金は逆に3%上がる結果に。

我が家の電気料金の推移。 使用量(青線)は下がったのに、電気料金は上がっている。

「なぜこんなことに?」

 

私以外にも、このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?

その答えは、「燃料費調整額」がマイナスからプラスになっているからです。

 

 

燃料費調整額とは?

ここで、燃料費調整額とは何かについて簡単に解説します。

 

これは、いわば「燃料価格が上がったときに、電力会社が電気料金にその上昇分を転嫁するための仕組み」です。 

 

今から26年前の1996年に始まった制度で、火力発電に使われる石油、LNG、石炭の「基準価格」と現在の価格(3か月平均)を比べ、上がっていれば電気料金にプラス(加算)、下がっていればマイナス(減算)されます。(計算式は省略します)

 

毎月の電気料金明細にも「燃料費調整額」は記載されていますので、お持ちの方はチェックしてみてください。

今年と去年の燃料費調整額を比べると…

今年の6月と昨年の6月の東京電力管内の燃料費調整額(単価)を比べると、このようになります。

 

2022年6月 +2.97円/kWh

2021年6月 ̠▲3.29円/kWh

 

昨年の数字はマイナスなのに、今年はプラスになっています。

つまり、昨年は、燃料費調整額が電気代から「差し引かれた」のに、今年は「付け足された」ことになります。

 

こうなった理由は、火力発電の元になる「原油」、「LNG」、「石炭」の価格が上がっているからです。 そしてその理由は、新型コロナ明けの景気回復によるエネルギ需要の急上昇やロシア・ウクライナ問題などの影響です。

 

燃料費調整額は今後も上がり続ける?

では、今後も原油などの価格が上がり続ければ、燃料費調整額もどんどん上がり続けるのでしょうか? 

 

いまだウクライナ問題は解決の糸口さえ見えず、ロシアは日本への報復として、日本も参加しているLNG権益(サハリンII)を接収しまう恐れも出ています。 今後もエネルギー価格が上昇すれば、家計への負担がさらに増えてしまいます。

 

実は燃料費調整額には一定の「上限」があります。 際限なく増えてしまうことは、

「今のところ」ありません。

 

ここで、「今のところ」としたのは、最近、電力会社の一部にこの上限を撤廃する、という動きが出ているからです。 

 

一部の電力会社は燃料費調整額の上限を撤廃

2022年7月26日現在、電力会社は計739社あります。(資源エネルギー庁 登録小売電気事業者一覧より) この中には、東京電力関西電力のような大手から、地元密着の小さな電力会社まで様々含まれています。

 

電力の小売り自由化によって、電力会社がこれだけ増えた訳ですが、エネルギー価格が上昇している現在、特に中小の電力会社は厳しい経営環境に直面しており、経営を維持するために上限撤廃に踏み切っているのが現状です。 

 

例として、自然エネルギー発電を主とするLoopでんきは1月時点で撤廃に踏み切っています。 また、燃料費調整額は維持したまま、別名目(たとえば電源開発費など)のコストを電気料金に上乗せしている会社もあります。

 

では、大手電力会社の今後の動きはどうなるのでしょうか?

 

燃料費調整額の4割強はLNG価格に左右されますが(為替の変動を含む)、このLNG価格は7月に入ってから高騰を続けています。 

 

そんな中、大手の東京ガスは、ガス料金に含まれる燃料費調整の上限撤廃を発表しました。 

 

このままLNG価格の高騰が続き、かつ政府の「節電キャンペーン」が想定通りに行かなければ、大手電力会社の燃料費調整額上限撤廃も、時間の問題かと思われます。

電気料金見直しの際は、「燃料費調整額」に注意を!

この夏、「燃料費調整額」は覚えておいて損のないワードです。

電気のプラン変更を考えている方は、特に注意です。

プラン料金は安くなっても、「燃料費調整額」は上限撤廃されていて逆に前のプランより高くなった、ということもあるからです。

 

政府も後押しする「節電」。

せっかく節電しても燃料費調整額で「相殺」されてしまうと努力が無駄になった気もしますが、世界的な燃料価格上昇はどうすることもできません。 

 

私は明日からもまた、地道に電気を消す日々が続きそうです。

日本の若者の投票率は60代の半分以下。ではアメリカでは?

7月10日に投開票が行われた参議院選挙。

大方予想されていた通り、結果は与党の圧倒的勝利で終わりました。

 

これにより岸田総理は、2025年までの「黄金の3年間」を手に入れ、政権は安泰、とも言われていますが、一方で、今後の政治課題は山積み。 

 

憲法改正、物価高対策、中国やロシアに対する国防予算、(特に日銀の黒田総裁退任後の)金融・財政政策など、日本の未来を左右するような重い決断が待っています。

 

これだけの課題が待っていると考えると、自分の一票もおろそかにできない。

そう考えていつも以上に気合を入れて投票しましたが、どうやら今回も10代の投票率は振るわなかったようです。 

 

今回の10代の投票率は34.49%。 前回から若干上がったとはいえ、60歳代の投票率(前回71.43%、今回はまだ公表前)と比べると、実に半分以下。

 

もう少し上がるかと思っていましたが、残念です。

 

今回の参院選は、以前にも増して若者の投票率を上げよう、という試みが多く見られました。

 

YoutubeやCMで、多くの芸能人が「投票に行こう!」と若者に呼び掛けていたり、候補者自らが、若者に投票を促したり。 

中には選挙ポスターに「バカこそ投票しろ!」という挑戦的なメッセージを書いている人も。

 

極めつけは、投票日の5日前に出た、こんな記事です。

「若年世代の投票率、1%低下で7.8万円損」

 

その内容を簡単に説明すると、

 

投票率と将来若者世代が背負うことになる国の借金(国債)、そして年金や健康保険などの社会保険との関係を調査したところ、投票率が下がるごとに、国債の発行額は増え、若年世代への給付(出産手当や児童手当)よりも、老年世代の給付(たとえば年金や介護費)が優先されてしまう、という傾向が明らかになった、というもの。

 

調査内容は(研究者自身も認めているものの)単純化されすぎているきらいがあるものの、それでも投票率と「お金」を直接結び付けた点はとても評価できます。 

 

「これなら高校生や大学生でも分かるはず。」と思ったのですが、若者の投票率を上げるのは簡単ではないことが今回の選挙でよく分かります。 

 

ちなみに、こちらのサイトによると、アメリカの世代別投票率は18歳~24歳が48%、65歳以上が71.9%。 

「やっぱり、アメリカの若者の方が政治に関心を持っている!」

と紋切型に考えたくなりますが、過去の投票率を見ると、22年前の2000年はそれぞれ32.3%と67.6%。 

 

あれ、今の日本とそっくりではないですか。

 

選挙年齢が18歳に引き下げられた2015年からまだ7年。  

アメリカは20年以上かけて少しづつ若者の投票率を上げていったのを考えると、若者の投票にも、長い目が必要のようです。

 

それでも、投票は絶対大事。 

「自分の1票なんか大したことない。」

「投票しても、自分の候補者が当選するはずない!」

なんて思わないで下さい。

若者であるあなたが投票したこと、それこそが政治に大きな重みを与えるのです。