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あと1年半で相続登記が義務化。 こんな人は要注意。

令和6年(2024年)4月1日に始まる「相続登記の義務化」

あと1年半に迫ってきました。

 

一見、「相続登記」なんて無縁に思われるかも知れませんが、誰でも一生に一度は経験することです。

この制度が始まると何が変わるのか、そしてどんな人が影響を受けるのかを、分かりやすくまとめました。

 

 

「相続登記の義務化」とは何か?

 

土地や建物など不動産の所有者が亡くなると、その不動産の名義を変更するために法務局で「相続登記」を行います。

 

ここで、「行います。」と書きました。

しかし、あと1年半後には「原則、行わなければなりません。」となります。

 

これが、「相続登記の義務化」です。

 

実施後は、相続人が「不動産を取得したことを知った日」から3年以内に登記を行わなければなりません。

 

これまでは相続登記は義務ではなかった

 

実は、現在(2022年11月)時点では、「相続登記」は義務ではありません。

つまり、所有者が亡くなっても、法務局で名義変更手続きをせずに放置しても、何のお咎めもなく済んでいました。

 

ただし、そのような土地を法務局が発見した場合は、相続人等に「登記のお願い」の通知が届くことはあります。

 

しかし、それでは済まない事態が、日本で起こっています。

いわゆる「所有者不明土地」の増加です。

 

所有者が誰だか分からない。

また、所有者が分かっていても、引っ越してしまい、連絡さえつかない。

 

そんな土地は、長らく荒れ放題でがけ崩れなど災害の危険があっても、広場や公園などに有効利用したくても、容易に手を付けられません。

また、国や市区町村による徴税手続きを煩雑にさせます。

 

この所有者不明土地を解消する一手が、「相続登記の義務化」です。

 

どんな人が義務化で影響を受けるのか。

 

「相続登記の義務化」が始まると、例えばこんな方に影響が及びます。

 

● 自分なら相続したくもない土地を、親や親族が持っている

 過去に不動産の名義人が亡くなったのに、今まで名義変更手続きをしなかった

 

1.自分なら相続したくもない土地を、親や親族が持っている。

(以下、人物が特定されないよう、配慮しています。)

 

これは、私のお客様(Nさん、男性)のお話です。

 

Nさんのお母さまは、約50年前に軽井沢の別荘地(約400㎡、120坪)を購入しました。

 

しかし、建物を建てることはおろか、せっかく購入した土地に一切手を付けることはなく、コロナが流行る直前に亡くなりました。

 

別荘地の存在を、この時初めて知ったNさん。

死後の整理が一段落した後、管理会社の担当者と共に、自宅から片道半日もかかってその地を訪れることに。

 

いざ現地に立つと、そこは想像を超えた光景が。

 

木々は無造作に枝葉を伸ばし、名ばかりの「道路」は泥に埋まり、針葉樹の落ち葉が堆積して境界線も分かりません。

 

木々に覆われて境界線も分からない。(イメージ)

Nさんは立ちすくみ、一瞬こんな考えが浮かびました。

 

「自分の名義にする理由は全くない! このまま放置しよう。」

 

気持ちはよく分かります。

しかし、相続登記が義務化されると、放置は許されなくなります。

 

2.過去に不動産の名義人が亡くなったのに、今まで名義変更手続きをしなかった方。

 

前述の通り、相続登記の義務化は令和6年4月です。

では、たとえば義務化前に亡くなった祖父の土地は、名義変更しなくてもいいのでしょうか?

 

答えはNOです。

義務化前に権利者が亡くなった土地も、義務化の対象です。

 

出典: 法務省不動産登記法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」

 

「ずいぶん前に亡くなった祖父の土地が、祖父名義のままになっている。」

「連絡を取っていない親族が亡くなり、土地の名義が宙に浮いている。」

 

そんな方は、たとえ義務化の施行前であっても、登記の義務を負うことになります。

 

登記をしないとどうなる?

 

「正当な理由」がないのに登記申請義務に違反した場合には「10万円以下の過料」が適用されます。 

 

ただし、違反したからいきなり過料が課される訳ではありません。

 

法務省によると、法務局が「義務違反」を把握した段階で相続人に通知し、それに従って相続人が登記手続きをすれば過料は課されません。

 

しかし従わない場合は「過料事件」として裁判所が要件を判断した上で過料を通知します。

 

出典: 法務省

 

どうやって法務局が義務違反を把握するのかは、今後の課題とされています。

 

市区町村との住基ネットなどで所有者の死亡などの事実と紐づけするのかも知れませんが、システムの連携が制度開始に間に合うのかは、やや疑問です。

 

こんな場合は、過料の対象とならない。

 

先ほど「正当な理由がないのに、登記申請義務に違反した場合…」とありました。

 

つまり、「正当な理由」があれば、科料は免れることになります。

 

では、正当な理由とは何でしょうか?

 

これも法務省によると、所有者が亡くなり、続けてその相続人が亡くなり、など相続関係が複雑だったり、書類収集に時間がかかるなどのケースを想定しているようですが、詳細は今後公表する、としています。

 

「相続人申告登記」で、相続登記が簡単に。

 

経験した方はお分かりかと思いますが、相続時の手続きはとても煩雑で、多くの書類を用意しなければなりません。

 

特に相続登記は、亡くなった方の出生時からの戸籍謄本一式や印鑑証明、遺産分割協議書など、多くの資料を提出する必要があり、大変です。

 

これを「義務」として相続人に要求するのはあまりにも酷、ということで、相続登記の義務化に合わせて「相続人申告登記」が新設される予定です。

 

この「相続人申告登記」は、原則、申告した相続人の戸籍謄本を準備すれば足り、かつ登記の義務を果たした、とみなされます。

 

しかし、これを済ませたからと言って、その後の「本登記」を省略することはできません。

 

相続人間で話し合い、相続方法が確定した段階で改めて「本登記」をすることになるので、二度手間として敬遠されるような気もします。

 

この「二度手間」感をいかに減らして手続きを簡略にするか。

これが、今後の課題でしょう。

 

馴染みはないが、いつかは来る「相続登記」

 

登記は普段、馴染みのある話ではありませんが、いざ自分に降りかかってきたときに慌てることになる話でもあります。

 

まずは、令和6年4月より「相続登記が義務化される。」

この事実だけでも、覚えておいて損はありません。