レモン一つでレモネードとレモンパイとレモンケーキを作る!

FP(兼USCPA)がレモンをレモネードにする(逆境を転機に変える)ヒントを書き連ねます。 毎週月・木曜日に更新。

年末調整の書類、忘れて放置してしまったらどうすればよい? 

 

毎年この時期(11月)から始まる年末調整。

 

会社にお勤めの方は、「〇〇月〇〇日までに人事部へ提出」などと書かれた年末調整書類(またはオンラインの通知)を既に受け取っていると思います。

 

しかし、この時期は年末に向けて業務が多忙な時期。

机の中にしまい込んだり、カバンの中に入れっぱなしにしたり、記憶から抜け落ちていないでしょうか。

 

もし、このまま年末調整を忘れてしまったらどうなるか。

以下、分かりやすくまとめました。

 

締め切りに遅れた書類を、人事部は受け取ってくれないことも。

 

年末調整書類のことなどすっかり忘れ、気が付けば12月半ばの締め切りもとうに過ぎて正月明け。

 

はっと気づいて、慌てて給与計算の担当部に連絡します。

しかし、時すでに遅し。

 

運がよければ年末調整の書類を受け取ってもらえますが、大抵はこう言われます。

 

「自分で確定申告して下さい。」

 

会社は、従業員から回収した年末調整書類を、翌年1月31日までに税務署へ提出しなければなりません。 

 

そのため、12月中の年末調整担当者は処理に大わらわです。

(別室で籠り切りになることも)

 

締め切りに遅れた一書類のフォローなどとてもできない、というのが担当者の本音です。

 

年末調整とは?

 

ここで、「毎年書類を書いてはいるけど、そもそも年末調整がなぜ必要なのか分からない。」という方のために、少しおさらいします。

 

年末調整とは、「これまで給与や賞与から差し引かれた所得税と、「本来あるべき所得税との差額を調整する手続きです。

 

もし、「あるべき」所得税より「これまで差し引かれた」所得税の方が少なければ、所得税は追加で徴収されますが、逆に多ければ、差額は還付されます。

 

 

なぜ「あるべき」と「これまで差し引かれた」所得税に差が出るのか?

 

差が生じる理由は、次の通りいくつもあります。

 

【追加で徴収の場合】

・年の途中で子が就職するなど、扶養親族が減った。

・年の途中で配偶者が働きに出るなど、控除対象配偶者が減った。

・賞与(ボーナス)に成果分が大きく上乗せされるなど、多額だった。

 

【還付の場合】

・年の途中で子どもが生まれるなど、扶養親族が増えた。

・年の途中で配偶者が専業主婦となり、控除対象配偶者が増えた。

・年の途中で本人(または家族)が障害者、寡婦寡夫、勤労学生になった。

iDeCoや小規模企業共済など、独自の年金や退職金制度にお金を拠出した。

・賞与(ボーナス)が通常より大きく減った。

・住宅ローンを組んだので、住宅ローン控除が使える(2年目以降)。

・生命保険料を支払った。

 

 

この中でも、特に働く方にとって気になるのは、「還付」です。

 

リストを見ればお分かりの通り、扶養控除、住宅ローン控除、生命保険料控除など、さまざまな「控除」を使うことで、「これまで差し引かれた」所得税を取り戻すことができます。

 

だからこそ、年末調整書類を期限までに提出しておくことが大切になります。

 

年末調整をしないと罰せられる?

 

年末調整は、会社側の義務です。

従って、会社側が故意に年末調整せず、適切に源泉徴収を行わなかった場合は、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が課されます(所得税法242条)。

 

一方、従業員が年末調整書類を提出しなかったからと言って、罰せられる訳ではありません。 

 

ただし、社内で迷惑がかかるので、やはり書類は期限までに出しておいた方がよいでしょう。

 

年末調整書類を出せなかったら、確定申告で。

 

ずっと年末調整書類を出さなかったり、遅れて人事部に出したものの断られた場合は、面倒ですが自分で確定申告することになります。

 

そのために、会社から配布される源泉徴収票を元に、扶養控除など各種控除を入れて、「あるべき」所得税と「これまで差し引かれた」所得税の差を自分で計算します。

 

この結果、もし「追加で徴収」となった場合は、2月15日から3月15日までの確定申告期間に申告書を提出の上、不足の所得税を支払います。

 

一方、「還付」となった場合は、確定申告期間に関係なく、その年の1月1日から5年間で申告書を提出すれば、還付を受けることができます。

 

確定申告をしても、家族の異動は会社へ別途報告を!

最後に注意点です。

 

年末調整書類を出しそびれてヒヤヒヤしたものの、何とか確定申告で控除できた方も、ここで安心してはいけません。

 

申請した控除の元になる家族の異動、例えば子どもが生まれたり、引退した親が扶養に入った、などの情報は、必ず会社に報告(又はシステムに入力)することを忘れないで下さい。

 

これを忘れると、各種控除がない前提で、毎月給与から差し引かれる所得税が計算されてしまい、手取りが少なくなってしまいます。

 

これでまた年末に年末調整書類の提出を忘れると、さらに面倒になるので注意して下さい。

 

(筆者について)

神奈川県横浜市で「人生の転機における財産やお金の問題」の解決支援を行うZ Financial & Associatesを運営しています。