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FP(兼USCPA)がレモンをレモネードにする(逆境を転機に変える)ヒントを書き連ねます。 毎週月・木曜日に更新。

ちょっと待って! iDeCoが「まずはお試しで少額から」に向いていない理由

iDeCoが向いていない方とは?

 

会社員から自営業者、専業主婦まで加入できる「個人型」確定拠出年金、通称「iDeCo」。

 

  • 拠出した掛金は課税所得から引けるので、所得税や住民税が減る
  • 60歳まで原則下ろせない
  • 受け取る年金は公的年金等控除額が使えるから、課税上有利になる。

などのメリットがあり、人気を呼んでいます。

 

特に、「現役時代」は積み立てた掛金を給与所得から差し引くことができ、「引退後」はもらう年金からも控除を使える、という「2度おいしい」メリットは魅力です。

 

しかしこのiDeCo、向いていない方もいます。

それは「毎月の掛け金が少ない人」です。

 

iDeCoをやってみたいけれど、とりあえずお試しで最低額の月5,000円から!」

「毎月の掛け金支払いを軽くしたいから、月10,000円に減らそう!」

 

もし、このように考えている方は要注意です。

 

iDeCoを続けるだけでかかる様々なコスト

 

なぜ、毎月の掛け金が少ない人にはiDeCoは向いていないのでしょうか?

それは、iDeCoにかかるコストを差し引くと、利益が出ない、もしくはマイナスになる可能性があるからです。

 

iDeCoは、続けているだけで様々なコストがかかっていることはご存知でしょうか?

主なものをざっと列挙すると、下図の通りとなります。

iDeCoにかかる様々なコスト

それぞれの手数料について、簡単に説明します。

 

1.「初回1回のみ」のコスト(加入時・移管時手数料)

iDeCoに加入したり、会社を退職して元々あった会社の確定拠出年金iDeCoへ移し替えたときに発生します。 国民年金基金連合会への手数料として2,829円かかる他、利用する金融機関より「移換時手数料」として数千円が徴収される場合があります。

 

2.「運用中」のコスト

掛金を拠出して運用している間は毎月かかる費用です。(毎月の掛け金から差し引かれます) iDeCo事務管理を請け負う「国民年金基金連合会」への手数料(月105円、税込)、信託銀行への手数料(月66円、税込)がかならずかかります。

 

「運営管理機関手数料」(運用商品を購入した金融機関への手数料)は、金融機関によって0円から数百円とさまざまです。

 

なお、iDeCoは掛金の拠出を中断することが可能ですが、信託銀行への手数料(月66円、税込)は引き続き徴収されます。

 

3.「給付中」のコスト

年金として受け取る給付金の事務手数料が、毎回の給付金から440円(税込み)差し引かれます。

 

毎月5,000円の積み立てでコストの料率が29.47%!?

 

表中の手数料を見て、「毎月数百円程度なら大したことないな。」と思われるかも知れません。

 

しかし、iDeCoは老後の資産形成を目的にした制度です。 積立期間は何十年にもわたります。 その間、常に手数料が徴収されることを考えると、決して無視できないコストです。

 

そして、そのあおりを最も受ける方が、毎月の掛け金が少ない方です。

 

例えば、毎月5,000円の掛け金でiDeCoを始めるとしましょう。

積立開始から1年後の資産残高は60,000円になります。

 

5,000円×12ヵ月=60,000円

 

一方、コストはどうでしょうか?

初回のみのコストは2,829円、運用中のコストは毎月501円かかるとします。

すると、1年間のコスト合計は8,841円になります。

 

2,829円+501円×12ヵ月 = 8,841円

 

1年後に60,000円の残高(年平均残高は÷2なので30,000円)を積み立てるのに、かかったコストは8,841円。 これを料率に直すと29.47%になります。

 

8,841円÷30,000円 ≒ 29.47%

 

言い換えると、5,000円を毎月積み立てて初年度に「黒字」にするためには、29.47%以上のリターンを出さなければいけないことになります。

 

これは、よほどマーケットが好調でなければ達成できない数字です。

掛け金が少ないとiDeCoが向かない理由がお分かり頂けたでしょうか。

 

毎月の掛け金が少ないほど、手数料負担が重くなる。

 

そうは言っても、これから何十年と続けていけば、残高も積み上がるし、長期運用でリターンも出やすくなる可能性は確かにあります。

 

しかし、それでも毎月払うコストは、掛金が少ないほど重くなります。

 

毎月のコストが500円として、

 

毎月10,000円の掛け金は5%減って9,500円に。

毎月5,000円の掛け金は10%減って4,500円に。

 

このように、実際の運用に回る掛金は減ってしまいます。

 

このコストがなければ、その分を複利で何十年も運用できることを考えると、勿体ないと言わざるを得ません。

 

少ない掛金で始めた私の失敗

 

実は、私もこの「少額でiDeCo」を続けてしまった一人です。

そもそもiDeCoを始めたきっかけは、当時勤めていた会社が確定拠出年金(会社型)を導入したことでした。 

 

その後独立することになり、会社時代に使っていた金融機関(運営管理機関)はそのままにして、(iDeCoにどんなコストがかかるのかよく理解もせず)勤務中に積み立てた拠出金をiDeCoに移しました。

 

当時の掛け金は毎月10,000円。

コストを考えると、この掛け金が少なすぎることは述べた通りです。

しかも当時は所得税が少なく、iDeCoの所得控除メリットはほとんどありませんでした。

 

つみたてNISAも合わせて検討を

 

もし、少額からiDeCoを始めようかと思っている方は、是非、所得税が減るメリットがあるかどうかを確かめた上で、(iDeCoのようなコストがかからない)つみたてNISAも合わせて検討することをおすすめします。

 

(筆者について)

FP、USCPAの筆者が運営する事務所です。

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